研究課題/領域番号 |
22K02167
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
奈良 一寛 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (60540903)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アピオス / イソフラボン / アグリコン化 / 調理加工 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
マメ科植物であるアピオスに、イソフラボン配糖体が含まれることを明らかにし、小麦粉加工品の材料として利用したところ、体内への吸収効率が良いアグリコンへ変換(アグリコン化)することが確認された。これは、加工中に共存する成分が相互に作用していることで起こっている現象と考えられるが、食品成分間の相互作用によるアグリコン化の量的・質的変動についての研究は見られない。 そこで、イソフラボン組成の異なるアピオスの塊茎部と茎部を用いて、それぞれのイソフラボン量を定量し、アグリコン化に関与する酵素について調査し、アグリコン化への温度、時間などの環境条件についても検討した。アピオスイソフラボンのアグリコン化には、小麦粉の内在性酵素であるβ-グルコシダーゼが関与し、それは室温条件下で作用するが、4℃条件下でも反応し、配糖体からアグリコンが生成されえることが確認された。したがって、アピオスイソフラボンのアグリコン化には調理加工条件が関与することが推察された。一方で、イソフラボン組成の差異によって、アグリコン化の程度が異なることも明らかとなった。 小麦粉の内在性酵素によって、でんぷんから糖類が分解生成し良好な甘さが増すこと、老化遅延の効果も期待できることが示されているが、機能性成分の吸収性にも影響を及ぼすという結果も得られたことから、食品中の成分による相互作用の利用は新たな加工技術への応用として利用できる可能性が示唆された。アピオスイソフラボンの機能性について明らかにしていくためには、共存する成分の相互作用が、調理加工の際にどのような影響を及ぼすのかについて、さらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アピオスイソフラボンのアグリコン化には、イソフラボン組成の差異によって、アグリコン化の程度が異なることも明らかにすることができた。また、ヒトの消化吸収系を摸した人工消化モデルを用いて、イソフラボン量および共存する各種成分(多糖類、たんぱく質など)の変化について明らかにすることができ、さらなる展開の可能性についても模索することができたことから、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
食品は複数成分の集合体であり、調理加工の際には、様々な食材を混合することから、機能性の解析においては、食物として摂取した場合を考慮し、複数成分の混合系における消化性および生体利用性についても明らかにする必要がある。ヒトの消化吸収系を摸した人工消化モデルを用いて、イソフラボン量および各種成分(多糖類、たんぱく質など)を分析定量することを明らかにしたことから、今後は、共存する成分の相互作用が、機能性および調理加工品にどのような影響を及ぼすのかについて検討していく。
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