研究課題/領域番号 |
22K02169
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
能見 祐理 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (20614887)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メイラード反応 / α-ジカルボニル化合物 / AGEs / ラクトース |
研究実績の概要 |
本研究は食品加工・貯蔵条件下におけるα-ジカルボニル化合物(α-DCs)の動態に関わる制御因子を同定し、褐変反応機構の解明と制御法開発に繋がる知見を得ることを目的とする。本年度は牛乳の主要な糖質であるラクトース(Lac)を題材に、Lacから生じるα-DCsの全容を解明すべく、モデル溶液を用いてLacから生じるα-DCsを同定・定量するとともに、褐変や終末糖化産物(AGEs)生成への影響についても評価した。また、Lacとリジン(Lys)のメイラードモデル溶液から二糖の骨格を有するα-DCs誘導体が複数検出されたため、これら4種の化合物を単離し、構造解析を行った。新たに同定されたα-DCs誘導体も含めた分析システムを構築し、各種反応パラメータを変えたモデル溶液中のメイラード反応産物を解析したところ、α-DCsは中性条件下において生成量が増加し、Lacの分解によって生じたα-DCsとメイラード反応を介して生じたα-DCsに差異がみられた。Lacの分解によって生じたα-DCsは酸化的条件下で生成が増加した一方、メイラード反応を介して生じたα-DCsは酸化・非酸化的条件による差はあまり見られなかった。Lac-Lysのモデル溶液においてはglyoxal(GO)とLysの反応で生じるN6-carboxymethyllysine(CML)が多く生成していたが、GOよりもはるかに多い量のCMLが生成していたことから、GO以外の生成経路を介した可能性が示唆された。市販されている各種乳製品中のα-DCsの分布についても解析したところ、加熱処理工程を経た製品ではメイラード反応を介して生じた可能性が高いα-DCsが頻度高く検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに構築してきたメイラード反応の各段階を評価できる分析系を用いて解析することで、α-DCsの動態や生成メカニズムに関して詳細な知見を得るとともに、α-DCsの動態に関与する可能性のある因子をいくつか見出すことができた。ただし、食品中のα-DCsの全体像を把握するためには、より極性の高い分析対象物質にも対応できるよう既存のα-DCs分析システムの改良を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出されたα-DCsの動態に関与する可能性のある因子について詳細に検証するとともに、引き続き反応パラメータを変化させた様々なモデル系を用いてメイラード反応全体を俯瞰した網羅的解析を進め、新たな因子の同定を目指す。また、既存の分析システムの改良を進めるとともに、α-DCs生成メカニズムを基にした制御法についても検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計上していた旅費の使用がなかったため。次年度は対面の学会参加を複数予定しているため、予定通り使用できると思われる。
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