研究実績の概要 |
本年度は、昨年度確立したヒト大腸細胞のNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子発現量(転写量)の定量性PCR法 (qPCR)による定量システムを利用して、種々のフィトケミカルがヒト大腸癌由来のDLD-1細胞の活性酸素産生系に及ぼす影響を調査した。DLD-1細胞に分化誘導剤の一つであるレチノイン酸とフィトケミカル(ブテイン、イソリキリチゲニン、レスベラトロール、エクオール、ウロリチンA及びスルフォラファン)を添加して48時間培養した。これらのフィトケミカルはNox2(白血球の活性酸素産生系)を増強する活性を示す化合物である。細胞からRNAを抽出してqPCRに供し、Nox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子の発現量を定量した。その結果、レスベラトロール以外のフィトケミカルがNox1の転写量を顕著に抑制することが明らかとなった。来年度以降は、対象となるフィトケミカルの種類をさらに増やして、それらの効果を検証して行く予定である。 一方、フィトケミカルが白血球の活性酸素産生系Nox2に及ぼす影響の解析については、コーヒー特有のフィトケミカルであるカフェストール及びカーウェオールが共にこれを活性化することを見いだし、Fundamental Toxicological Sciences誌に筆頭著者として発表した(Kikuchi H. et al., Fumdam. Toxicol. Sci., 10: 233-240, 2023)。 Nox2についても、興味深い研究データをいくつか得ており、来年度以降さらに解析を進める予定である。
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