研究実績の概要 |
鶏卵アレルギーは日本の食物アレルギーの主要な原因の一つであり、管理には正確な診断と最低限の原因食物の除去が求められる。当院では2017年まで加熱卵白を用いた食物経口負荷試験(OFC)を行っていたが、2018年からは安全性を重視し、baked egg (BE)を用いたOFCを施行している。今回の研究では、BEを用いたOFCの安全性を評価するため、加熱卵白(Heated Egg: HE)OFCとの比較検討を行った。 2018年4月1日から9月30日に行ったBEのOFC(BE群)と、2017年4月1日から9月30日に行ったHEのOFC(HE群)について診療録を後方視的に検討した。BEのOFCは、全卵相当量として全卵2.363gに相当する量で行った。HEのOFCは20分間加熱した卵白を使用し、負荷量は患者ごとに主治医が決定した。 BE群27人(男児20人、74%)、HE群30人(男児16人、68%)であった。月齢、アレルギー症状、アナフィラキシーの既往について両群間で差は無かった。卵白特異的IgE値中央値はBE群で42.2UA/mL、HE群で28.75UA/mLであった。OFCの陽性例はBE群では2例(6.4%)、HE群では19例(63%)であり、統計学的に有意な差が認められた(p<0.01)。誘発症状については、BE群ではGrade1の症状のみが2例認められたが、無治療で自然消退した。一方、HE群ではGrade1,2の症状が16例、Grade3,4の症状が3例で認められたが、いずれもアドレナリン投与は不要であった。 BEを用いたOFCはHEを用いたOFCに比べて安全性が高く、鶏卵アレルギー患者に対して有用な診断手法であることが示された。
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