研究課題/領域番号 |
22K02176
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
米田 千惠 千葉大学, 教育学部, 教授 (20361404)
|
研究分担者 |
大石 恭子 和洋女子大学, 家政学部, 教授 (40372908)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 魚介肉タンパク質 / 変性 / 加熱温度 / pH調整 |
研究実績の概要 |
低温調理およびpH調整が魚介肉にもたらす変化について、まず、メカジキ肉を対象にpH調整による性状変化を食塩の影響も含めて明らかにした。生肉を6種の浸漬液(水、1.7%重曹、食酢および、これに2%食塩を添加したもの計6種)に2時間浸漬し、浸漬後の魚肉を65℃で1時間加熱した。浸漬後の生肉は重曹、食塩水、食酢、重曹(食塩添加)に浸漬したものは重量が増加し、筋原線維たんぱく質ミオシンのpHによる溶解性の違いによるものと考えられた。 次に加熱肉の性状についてみると、重曹(食塩添加)、重曹、食酢、食酢(食塩添加)に浸漬したものは、対照(浸漬処理無し)よりも、有意に重量減少が少なく、加熱歩留まりがよいことが示された。一方で、中性の食塩水では対照と同程度の重量減少であった。重曹(食塩添加)試料は、官能評価で軟らかく、ほぐれやすいと評価された。加熱肉のテクスチャーは食酢浸漬試料が最も軟らかくなった。酸性およびアルカリ性条件で浸漬した加熱肉は重量減少が抑制され、テクスチャー改良につながることが示された。 メカジキ肉、カツオ肉を対象に加熱温度(65℃、85℃)と加熱時間(15分、60分)の異なる加熱条件を設定し、加熱肉の重量変化、水分含量、保水性、テクスチャー特性について調べた。加熱温度が高く、加熱時間が長い方が、重量減少が進み、硬いテクスチャーとなった。保水性、テクスチャー特性の破断荷重は加熱温度による違いが明確となった。一方で、加熱時間によるたんぱく質の凝固と水分の存在状態については別途検討が必要であることが示された。さらにメカジキ肉表面にふり塩操作した後に、同様の条件で加熱したところ、ふり塩操作した加熱肉のほうが重量減少は少なかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pH調整が魚介肉にもたらす変化について、メカジキ肉を用いて生肉および加熱肉の性状を明らかにすることができた。生肉の性状については、既報と一致する結果であった。加熱肉の性状については、酸性およびアルカリ性領域で中性とは異なる傾向を明らかにした。 低温調理が魚介肉にもたらす変化について、メカジキ肉およびカツオ肉を対象に、食塩添加の効果も含めて調べた。魚種による違いも示され、種特異性と鮮度の要因から検討していくことができる。
|
今後の研究の推進方策 |
タンパク質の詳細な機能解析を行い、タンパク質変性制御との関連を探る。まず、低温調理およびpH調整した魚介肉について、タンパク質(筋形質タンパク質,筋原線維タンパク質,肉基質タンパク質)を抽出し,それぞれの抽出液のタンパク質量の測定,電気泳動分析からタンパク質変性の程度,テクスチャーとの関連を探る。タンパク質の機能解析としてDSC(示差走査熱量計)測定、酵素活性測定を行い,タンパク質変性の程度と機能の関連を明らかにする。また,肉基質タンパク質の主要成分であるコラーゲンの性状を調べ,テクスチャーとの関連を探る。 低温調理およびpH調整した魚介肉の嗜好性について,官能評価により調べる。食味因子や飲み込みやすさを評価項目に設定し,生肉,従来の加熱調理品とは異なった食味が受容されるかについて明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
魚肉試料(カツオ)の成分の季節変動が予想以上に大きく、本年度後期の試料ではなく、次年度の同じ季節の試料で実験をする必要が生じたために、本年度の物品費を次年度に使用する計画である。
|