研究課題/領域番号 |
22K02177
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中村 和吉 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (60270930)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 酸化チタン系光触媒 / 自動洗浄 / 衣服洗浄 |
研究実績の概要 |
今日までの衣服洗浄は多量の水および洗剤を用いる方法が主であった。本研究で提案する新規な衣類洗浄方法は、繊維製品に付着した汚れや臭気成分を予め製品表面上に適用した光触媒によって水と二酸化炭素に分解する(自動洗浄、自己洗浄という)もので、淡水および洗剤を必要としない。この洗浄方法が実現できれば、淡水を使用しない衣類の洗濯が可能となるばかりでなく、淡水の使用が大きく制限される生活空間(宇宙、深海、海上、災害等でインフラが停止した避難所等)において、自身および周辺の他者から生じる臭気・汚れがもたらす不快感および罹病リスクの低減によるQOLの改善が期待できる。 繊維製品の光触媒加工は、酸化チタン等による光触媒反応を利用し、表面に付着した汚れや臭気成分などの有機物質を分解・除去することが目的である。しかし、光触媒作用は繊維そのものにも影響をおよぼし製品自体の性能劣化が懸念される。本研究では繊維側に注目し、拮抗関係にある「触媒効果」と「繊維へのダメージ」をコントロールすることで衣料に実使用可能な繊維素材の選択、触媒の適用方法について検討する。 本年度は「触媒による侵蝕が最少となる素材(繊維・織糸・織り組織等)」について調査を来なった。紫外線照射装置導入の遅滞により当初計画の進捗にも影響があったが、①酸化チタン系光触媒を直接布帛に適用してもっとも侵食ダメージが少なかった素材はポリエステルだったこと、②光触媒付着量が最少なのもポリエステルであったが、日常生活で人体から付着する程度の皮脂成分、悪臭成分の除去にはじゅうぶん効果があったことがわかった、現在はこれらの成果を学会誌に投稿する準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロシアによるウクライナ侵攻に伴う世界規模での半導体部材の極端な品薄が原因して、導入予定のLED型紫外線照射装置が2倍近く値上げとなり別機種に変更を行った。しかし別機種製品についても同様に半導体部品調達の遅滞によって納品が延期され、計画より3ヶ月ほど進捗が停滞した状態で本研究に関わる実験を始めたため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の計画については、2022年度での機材導入の遅れに伴う実験成果の進捗を取り戻して当初通りの研究を行う予定である。すなわち、布帛に吸着した光触媒の形態観察を電子顕微鏡や、X線マイクロアナライザを用いて行う。また、肌着としての使用を想定した光触媒加工布の風合い変化、汚れ、臭気の除去能力について検討を行う。
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