研究課題/領域番号 |
22K02183
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
田中 求 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 教授 (40507852)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 和紙 / 人的つながり / 伝統工芸 / 獣害対策 / 農地の多面的機能 / 山村 / 農福・伝福連携 / 耕作放棄地の活用 |
研究実績の概要 |
今年度は、北関東・東海・近畿・四国・九州・中国地方における和紙原料産地での獣害の拡大状況を把握するとともに、具体的な対策について各地域の原料生産者への情報提供を実施した。特に新たな情報として、九州地方で今後新たにイノシシのコウゾ食害が広がる可能性が高く、早めの対策が必要であること、食害に遭いにくいガンピやミツマタの栽培導入についての情報共有を行った。 さらに、複数地域での原料栽培方法の改善推進により、生産体制が向上する一方で、国産原料を用いた高質な和紙の販売量が減少していることがわかり、日本画家や書家、版画家、修復士に加え、提灯や和凧など和紙を用いた伝統工芸の職人、和紙販売業者との情報交換を進めた。その結果、特に伝統工芸において高質な和紙が必要とされているものの、原料や加工方法の変化にともない和紙の質が劣化しており、紙漉き師と他の伝統工芸の職人間で直接的に情報交換を行うほか、多様な原料、加工方法による和紙を試用する中で、求められる和紙の質を探っていく必要があることがわかった。現在は、紙漉き師への情報提供と伝統工芸職人による和紙の試用を進めており、その結果は2024年度中に把握できる予定である。これらの試行において、和紙原料の生産および加工での福祉作業所及び支援学校との連携を進めている。 また、和紙および原料の生産、加工状況について、和紙に関心を持つ一般利用者への情報共有を行う「楮サミット」にパネリストとして参加するとともに、和紙の可能性を伝えるための舞台芸術への協力を進めた。同時に、研究成果を踏まえて、茨城県の大子那須楮保存会への原料加工と流通に関する情報提供を行ったほか、高知県の土佐和紙総合戦略において、他県の和紙および原料生産・販売状況を分析し、産学官連携による改善方策の検討を進めている。これらの成果の一部は、学術書として出版している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北関東から九州まで、多くの和紙・原料産地における状況把握および改善策などの情報提供を進めることができた一方で、北海道、東北、甲信越などにおける研究はまだ進められておらず、来年度の課題となっている。 また、和紙・原料の生産、流通、販売に関わる現場関係者、行政、利用者などへの情報提供は進みつつあり、成果の一部を学術書に執筆しているものの、学会発表などは2024年度以降に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
調査が進んでいない北海道や東北などでの現地調査と情報交換を進めるとともに、原料の生産・加工などの改善策に加えて、和紙の質およびトレーサビリティ向上による伝統工芸などへの和紙利用体制の再構築を進める。さらに学会発表により、他分野の専門家との情報交換を通して、他の視点からの再構築策を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入計画を誤ったため、わずかな残額が生じたが、2024年時の物品購入に用いる予定である。
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