研究課題/領域番号 |
22K02184
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
山岸 あづみ 新潟県立大学, 人間生活学部, 准教授 (00400531)
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研究分担者 |
田村 朝子 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (60240991)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大麦 / 玄米 / α化粉末 / 粘度 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
今年度は大麦(もち種、うるち種)、玄米、うるち米(コントロール)を試料とした。α化粉末は、炊飯後に凍結乾燥を行い、その後粉末化して作成したもの(湿式法)および、湿式加熱を行わずにでんぷんをα化することができる、加熱・せん断粉砕法(加熱・せん断法)で作成された粉末を用いた。粉末の特性として、粉末の水分量、吸水性、吸油性を確認した。また、水および水と油(1:1)の溶液に粉末を添加してペーストを作成し、粘度、テクスチャー、安定性等の確認を行った。 その結果、吸水性は全ての粉末において、加熱・せん断法に比べて湿式加熱法で作成したものが高かった。粉末の種類による吸水性の比較では、加熱・せん断法では大麦(うるち種)が他の試料に比べて有意に低く、湿式法では大麦(もち種)が他の粉末に比べて有意に高かった。吸油性は玄米やうるち米の粉末において、湿式法に比べて加熱・せん断法で作成した粉末が有意に高かった。 水のみで作成したペーストの粘度とテクスチャー(かたさ)の結果、各粉末とも湿式法で作成した粉末は、加熱・せん断法に比べて粘度やかたさが高かった。安定性は、すべての粉末において加熱・せん断法で作成した粉末のペーストは離水が生じた。水:油の溶液によるペーストの作成は、加熱・せん断法で作成した粉末のみペーストの作成が可能であった。 実験結果より、作成法や穀類の種類によりα化粉末の吸水性、吸油性の違いが明らかとなった。本実験で得た各種α化粉末の結果は、調理への利用を検討する際の重要な基礎データとなる。現在、うるち米のα化米粉は咀嚼・嚥下困難者用食品等として利用されているが、うるち米は玄米や大麦に比べてビタミンや食物繊維が少ない。本結果より玄米や大麦でもα化粉末のペーストが作成できたことから、うるち米に比べ栄養価が高い製品の製造が可能となる意義がある内容と言える
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は当初予定していた大麦や玄米のα化粉末の作成は行えたが、豆類の粉末は作成することができなかった。研究計画では、1年目に穀類や豆類のα化粉末を作成した後、粉末の性状や調理特性を確認する予定であった。しかし、α化粉末の作成に時間が掛かってしまった。また、作成した粉末の長期保存を避けて効率的に実験を行うことを優先したため、今年度は研究計画の3年目に予定していた、作成した玄米や大麦のα化粉末の調理特性に関する実験を優先的に行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は令和4年度に作成した玄米、大麦のα化粉末の特性について、令和4年度の結果をもとに各粉末のペーストの性状に影響を及ぼしている可能性が高い項目から優先的に分析を行う予定である。また、粉の鮮度を考慮して玄米、大麦で作成したα化粉末を用いた非加熱調理への活用について検証を行う。さらに、数種の豆類を用いて作成条件の検証を行い、豆類のα化粉末の作成方法を確立する。その後、粉末の分析や調理特性の実験に必要な量を作成する。これらの実験を令和5年度に優先的に行った後、豆類の粉末特性の分析や調理特性、非加熱調理への検討を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、加熱・せん断粉砕法によるα化粉末の1サンプルあたりの作成費用が当初予定より抑えられたことが影響している。また、粉末の性質に関する分析を行えなかったので、これらの分析に必要な試薬を購入しなかったことも影響している。 来年度以降は豆類のα化粉末の作成や粉の性質について分析を行うため、次年度予算額を使用して今年度予定していた粉末の性質に関する実験を遂行する。
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