研究課題/領域番号 |
22K02191
|
研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
有井 康博 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 教授 (60360484)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 豆腐 / 凝固剤 / 添加物 / 物性 / 嚥下困難者 |
研究実績の概要 |
えん下困難者においては、食の選択性が狭く、生活の質 (QOL) が下がる。本研究では、えん下困難者のQOLを向上させる一助として、豆腐の加工技術の改変が加工食品の物性に与える影響を明らかにすることを目的に実施している。本申請課題では、浸漬を除く、3つの工程において、①豆乳調製における改変が及ぼす物性変化、②凝固剤添加における改変が及ぼす物性変化、③豆腐成形における改変が及ぼす物性変化、に取り組み、えん下困難者用食品の理論的な創出に必要な知見をまとめることを目指している。 2022年度は、上述の②と③の一部を実施した。種類の異なる糖類を豆乳に添加することで、形成された豆腐に生じる物性の変化について明らかにした。また、でんぷん、水溶性食物繊維の添加が物性に与える影響についても明らかにした。糖の添加における物性の変化については、現在、国際的な学術論文雑誌に投稿中である。でんぷんの添加が与える影響については、Journal of Food Engineeringに報告済みであり、2023年8月に行われる日本食品科学工学会において発表する予定にしている。また、凝固剤をグルコノデルタラクトンとして、種類の異なる糖を添加し、物性に与える影響を明らかにした。本件についても、現在、国際的な学術論文雑誌に投稿中である。さらに、でんぷんを添加するタイミングを変えることで、物性に与える影響を調べた。本件に関しては、2023年度に同条件で糖の種類を変える実験を実施して、併せて報告する予定である。 Journal of Food Engineeringへの掲載によって、テレビ大阪、朝日新聞、神戸新聞、教育学術新聞、サンデー毎日などに研究内容を取り上げられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
測定条件がとても多く、物性測定の装置が共通機器であることも影響し、測定が滞ることが生じた。また、得られた結果が、学術的な意味が高いため、論文投稿を優先的に実施したこともあり、実験計画の遅れにつながっている。予想以上に物質を添加することで生じる物性の変化が大きいため、一つ一つの物質について、丁寧に調べる必要が生じている。さらに、新型コロナ感染症に関する他業務における対応が重いために、十分な研究時間の確保ができていないことも原因の一つである。
|
今後の研究の推進方策 |
物性測定の装置を購入することで、測定の滞りを解消する。予想以上に物質を添加することで生じる物性の変化が大きいため、一つ一つの物質について、丁寧に調べる必要が生じていることから、網羅的な解析よりも物質ごとに深く調べる方向に転換していく。そのため、当初の研究計画で提示していた添加物の中から、より優先度の高いものから順に調べる必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物性を測定する装置が共通機器のため、測定に滞りが生じてしまったこと、新型コロナ感染症の対応についての業務ウェイトが大きかったこと、得られた結果が学術的に価値がある内容であったために、論文化することを優先し実験が滞ったこと、が主な原因である。 上記の理由を解消するために、次年度は、本年度分と次年度分の一部を使用して、物性測定装置を購入することで、測定の滞りをなくす。また、本年度に測定できなかった部分のうち、優先度が高いものを測定するために本年度分を次年度に使用する。さらに、次年度の実験計画についても、優先度の高いものを測定する工夫を行う予定である。
|