研究課題/領域番号 |
22K02208
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
滝沢 潤 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20314718)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 言語マイノリティ / 第一言語教育ニーズ / 教育行政支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本におけるバイリンガリズム(日本語と日本語以外の言語の習得、伸長)の理念に基づく教育機会保障に関する総合的な研究の一部として中国語を第一言語(母語)とする中国語系言語マイノリティを対象に、次の3点を目的に行うものである。第一に、中国語系言語マイノリティの保護者・児童生徒を対象に、第一言語教育に対するニーズの実態把握を行い、保護者の社会経済的背景、家庭環境、教育環境等の諸条件との関連から、かれらの第一言語(中国語)教育ニーズの構造を明らかにする。第二に、中国語系言語マイノリティが在籍する学校及び教育委員会に対して、第一言語(中国語)教育の現状認識及び教育機会として保障されるべき第一言語教育の理念や目的、方法、条件整備に関する認識について明らかにする。そして第三に、中国語系言語マイノリティの第一言語教育ニーズと、学校・教育委員会の第一言語教育の現状認識及び保障されるべき第一言語教育との比較考察を通じて、第一言語教育に関する条件整備のあり方について考察し、第一言語教育の機会保障モデルを構築する。 今年度(令和4年度)は、 中国語を第一言語とする日本語指導が必要な児童生徒とその保護者に対してインタビュー調査を実施し、かれらが中国語による教育のニーズをどのように捉えているかについて、仮説的な理論枠組みを構築することとしていた。しかしながら、依頼予定であった児童生徒と保護者との調整が困難となったため、以前より作成中であった「地方自治体における日本語指導が必要な児童生徒を対象とした政策・事業の実態に関する全国調査(仮)」に本研究の目的、観点を加味したものに修正を行った。本調査の主な設問として、日本語指導 が必要な児童生徒に対する教育目的、方針や当該児童生徒に関する基本的なデータ、拠点校の有無、規模、特別な教育課程の編成、指導形態等である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、上述の「研究業績の概要」で述べた目的や学術的背景を踏まえ、次の三つの「核心的な問い」を設定している。 ①中国語を第一言語(母語)とする中国語系言語マイノリティの保護者・児童生徒は、どのような第一言語教育に対するニーズを有しているのか、そしてそれは、保護者の社会経済的背景、家庭環境、教育環境等の諸条件との関連から、どのように形成され、どのような構造を有しているのか。 ②中国語系言語マイノリティが在籍する学校及び教育委員会は、第一言語による教育支援の現状をどのように認識しているのか、また、教育機会として保障されるべき第一言語教育の理念や目的、方法に関してどのような認識を有しているのか。 ③第一言語教育ニーズに関して、中国語系言語マイノリティの教育ニーズと学校・教育委員会の現状認識や保障されるべき教育に関する認識との比較考察から、第一言語教育に関する条件整備のあり方はどのように構想できるのか。 しかしながら、上述の通り、インタビュー対象者との調整が困難になったため、日本語指導が必要な児童生徒に対する地方教育政策に関する調査に本研究のとりわけ、②、③に関する観点を加味するよう修正を行い、実施の準備を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
上述した地方教育政策に関する全国調査を実施するとともに、今年度予定していた、中国語を第一言語とする日本語指導が必要な児童生徒とその保護者に対してインタビュー調査を実施し、かれらが中国語による教育のニーズをどのように捉えているかについて、仮説的な理論枠組みを構築する。加えて、上述の理論枠組みを用いて、質問紙調査を作成し、自治体の規模や日本語指導が必要な児童生徒の規模・多様性などを考慮して調査を実施し、その結果を考察することを通じて中国語系言語マイノリティの児童生徒及び保護者の教育ニーズの実態を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、中国語を第一言語とする日本語指導が必要な児童生徒とその保護者に対してインタビュー調査を実施し、かれらが中国語による教育のニーズをどのように捉えているかについて、保護者の社会経済的背景、家庭環境、教育環境等の諸条件と関連づけて仮説的な理論枠組みを構築することを予定していた。しかしながら、インタビュー対象者との調整が困難となったため、当初予定していた通訳料などが未使用となり、次年度使用額が生じた。次年度は、再度インタビューの対象者を選定、依頼して、インタビューを実施することで通訳料、訪問調査費用(交通費、宿泊代)等に使用することとする。
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