研究課題/領域番号 |
22K02214
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小野 雅章 日本大学, 文理学部, 教授 (70224277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国定修身教科書 / 国定教科書編纂趣意書 / 教育勅語 / 戊申詔書 / 国民精神作興ニ関スル詔書 / 青少年学徒ニ賜ハリタル勅語 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究プロジェクトの初年度ということで、関連先行研究の収集と分析、および研究課題に関する史資料の収集と検討を中心に研究を進めた。先行研究の収集に関しては、近代天皇制研究に関する研究書・研究論文、および教育関係詔勅の教授に関する研究書・研究論文(主として、教育勅語およびその他教育関係詔勅の解説書と修身教育に関する研究)の収集と分析を行なった。これら先行研究の検討により、研究の方向性を確定したうえで、本研究課題に関する、以下の史資料の収集と分析を行った。 まず、教育関係詔勅の教材化として、最も重要と思われる国定修身教科書における教育関係詔勅の記述の収集と検討を行った。教育勅語に関しては、国定第1期から第5期の国定修身教科書(児童書、および教師用書)の教育勅語関係の記述、天皇・皇室関係の記述を分析対象にした。戊申詔書、「国民精神作興ニ関スル詔書」などに関しては、それぞれの詔書が掲載されている国定修身教科書(児童書・教師用書)の当該箇所を分析した。 つぎに、教育勅語など教育関係詔勅の教材化の意図を明確にするために、国定教科書編纂趣意書、および教育関係雑誌の当該部分についての収集と分析を行った。さらに、教育関係雑誌における教育勅語やその他教育関係詔勅に関する論文を収集・分析し、当時の教員・教育関係者が、教育関係詔勅を授業で取り上げ、どのように取り扱ったのか、この点を中心に分析を行った。 そして、教育関係詔勅の教材として、国定教科書以外の掛図、双六、錦絵など学校の内外で教材として用いられたであろう「モノ」を古書店などを通じて収集した。これら教材の出版年などを確認しながら、どの時代に用いられた「モノ」(教材)であるのかを確定した。これらが実際の授業でどのように用いられていたのか、この点に関する分析は次年度以降の課題になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究概要の実績」で示した通り、研究プロジェクトの初年度の目標としていた、広範な先行研究の収集と分析、および刊本を中心とする関連史資料の収集を中心に行なった。分析対象とした先行研究、調査・収集した関連史資料は目録化し、一点ずつ研究室・自宅を含め、その配架先を明確にした内容でデータベースソフトに入力し、それぞれの史資料に効率よくアクセスできるようにし、次年度以降の史資料の分析を容易にできる体制を整えた。これらの点は、研究開始初年度に達成すべき目標としていたもので、最低限の目標は達成できた。 しかし、年度当初はいまだ、コロナウィルス感染症対策の影響を受け、博物館、文書館、あるいは各学校など、一般閲覧の制限や部外者の来訪を認めない機関が多く見られた。そのため、各学校に残されている、修身科の教授細目、授業案、答案など、本研究にとって重要な史資料の予備調査が十分に行うことができなかった。その概要は、史料目録や蔵書目録などで確認してはいるが、国宝旧開智学校校舎や長野県諏訪市立上諏訪小学校など現地に赴き、ひとつひとつの現物を確認する迄には至らなかった。この点については、次年度以降に本格化するとともに、重要な史資料については、翻刻を本格化して史料の公開を進めたいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
初年は、先行研究の本格的な収集と分析、さらには国定教科書、国定教科書編纂趣意書、雑誌掲載記事など刊本の基本史資料の調査・収集を中心に研究を進めた。今後は、この初年度の研究成果をもとにして、次の事項を行う予定でいる。 まず、国宝旧開智学校校舎、長野県諏訪市立上諏訪小学校など、明治期から戦後教育改革期に至る迄の学校文書を網羅的に所蔵している機関に赴き、教育勅語他、教育関連詔勅の教授細目、掛図、双六などの教師の私製を含めた副教材、の調査・収集と目録化、およびその分析を行うことを第一に進める予定でいる。そのうえで、研究の内容をより深めるために、教育勅語他、教育関係詔勅関係の答案(教育勅語の暗写など)の調査・分析を進め、その評価の観点がどこにあったのかなどについて分析したいと考えている。また、手書きの史資料については、翻刻を進めることも同時並行で進める予定でいる。 こうした研究の成果にもとづき、研究計画の中間のまとめとして、関連学会や研究会などにおいてその成果を公表し、議論を通して研究の深化を進めることにつとめるとともに、学会紀要、あるいは所属機関の研究紀要などにその研究成果を投稿し、研究の中間報告を行い、広く批判を仰ぐことにより、最終年度の研究成果の総まとめをするための準備を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度中ごろまでは、コロナウィルス感染症対策の影響で、当初予定していた史資料の調査・収集に関して、これに応じられないとする機関が多く存在した。そのため、研究計画で計上した旅費について未使用の状態が発生した。今年度は、こうした状況が改善され、すでに多くの機関から史資料の調査受け入れの回答を得ている。年度は遅れるが、次年度において、当初予定の旅費として使用する予定でいる。
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