研究課題/領域番号 |
22K02227
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
市川 秀之 千葉大学, 教育学部, 准教授 (70733228)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クリティカル・ペダゴジー / コモンズ / パウロ・フレイレ |
研究実績の概要 |
前年度にあたる2022年度は、クリティカル・ペダゴジーにおける人間と自然の関係の整理と、そこから引き出されうるものを探究した。これを受けて2023年度は、コモンズ概念に根差した教育のあり方を探究する一環として、主としてマイケル・ハートとアントニオ・ネグリの〈共〉に基づいた教育者の役割を検討した。クリティカル・ペダゴジー研究にはハートとネグリの論に依拠するものがあるが、一連の研究成果および彼らの論を検討することで、教育のあり方を探究することを試みた。 ハートとネグリによる〈共〉という概念は、〈帝国〉に対抗するマルチチュードを生み出し、それを支えるための資源およびコミュニケーション基盤として想定されている。自らもマルチチュードである教育者は、〈共〉を充実させるために知識を伝達したり、知性の用い方を教えたりするだけではない。ハートとネグリの論を検討した諸研究の成果、さらにはそうした研究において用いられているパウロ・フレイレの論を踏まえるならば、教育者はコミュニケーションの中で学習者を触発するという役割を持つ。知識の伝達や知性の用い方の教授は、この役割に包摂される。教育者は何らかの規範を伝達して学習者との間にヒエラルキーをつくることなく、マルチチュードの一員として触発という役割を遂行するのである。 上記研究の成果については、学会誌に掲載された論文を通して公開した。また、前年度の成果として執筆した論文が、学会誌に掲載されることが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに研究を遂行することができ、かつ成果を上げることができた。また、3年目に進める研究についても、見通しを立てることができている状態である。しかし、計画したものよりも遥かに進んでいる状況であるとは言い難い。そのため、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、前年度と今年度の成果を統合し、人間中心主義的ではない触発とはどのようなものでありうるのかについて、C.A.バウワーズの著作などを用いた文献研究により検討する。これにより、教育という行為そのものを、人間中心主義、コモンズ、触発といった諸概念を通して再解釈する予定である。
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