研究課題/領域番号 |
22K02231
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
臼井 智美 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 准教授 (30389811)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 外国人保護者 / 養育支援 / 多文化子育て / 教職大学院 / 学校の役割 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、外国にルーツのある子どもの教育において、外国人保護者と教員・学校の双方を支援できる方法と、支援を継続的に提供できるシステムの要件を明らかにすることである。具体的には、外国人保護者支援に関する教員・学校向けのハンドブックの開発と、現職教員が外国人保護者に対応できる実践的指導力を獲得できる教職大学院の授業内容の開発を行うことをめざしている。 令和4年度は、外国にルーツのある子どもが多数在籍する自治体で実施されている外国人保護者支援事業の視察や、支援に関わる関係者への聞き取り調査を実施した。調査等の結果、外国人保護者を支援できる機会があったとしても、それが学校外に在る場合は、支援機会とつながりをもつこと自体が、物理的、時間的に外国人保護者にとってハードルが高いことがわかった。それゆえ、自治体や国際交流協会等の学校外の機関が支援機会を設けることに意義はあるものの、そうした機会があるからといって、学校自体の保護者支援の役割が減るわけではないこと、学校にはやはり、継続的支援という点で優位に果たせる役割があることが予想される結果となった。 また、外国人保護者の思いを聴取するための予備調査として、海外に居住する日本人の国際結婚家庭の保護者に対して聞き取り調査を実施し、保護者が経験したものとは異なる学校教育を子どもが経験することへの思いの把握を試みた。既存の外国人保護者支援事業や施策は、言語的・文化的な異なりから生じる困り感への対応を主旨とするものが少なくないが、異文化環境の下で子育てを行う外国人保護者が抱える不安や悩みは、言語的・文化的なものに限定されない。それゆえ、外国人保護者の子育てに対する思いや気持ちに焦点を当てながら、予備調査で得られた視点を活かして、令和5年度には、日本国内に居住する外国人保護者に対する本調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外国人保護者の支援ニーズや困り感を把握するためには、それなりの数で外国人保護者に対する質問紙ないしは聞き取り調査を実施する必要があるが、そうした研究対象の量的確保は容易ではない。しかしながら、これまでに研究協力関係のある自治体等から、外国人保護者への調査協力が得られただけでなく、支援事業の試行の機会も得られたため、先行事例等とは異なる形で外国人保護者支援の方法を試し、その有用性を検証できる見通しをもつことができた。令和5年度には、速やかに調査や支援事業に着手できる。また、令和5年度から、教職大学院において外国人保護者支援に関する内容を含んだ授業を実施できる体制が整ったことから、研究で得られた知見を授業に反映させながら、外国人保護者支援ができる教員の実践的指導力の育成にとって効果的な授業内容が何かを、試行しながら開発することができる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、自治体や国際交流協会等がすでに実施している外国人保護者支援事業や施策についての情報収集を行うとともに、外国人保護者支援に関する先行研究等の収集を行った。今後は、これらの資料等を分析し、現在の外国人保護者支援事業や施策の特徴や傾向を明らかにする。それと並行して、外国人保護者に対する質問紙調査ないしは聞き取り調査を行い、外国人保護者の悩みや不安の内容とその背景要因の検討を行う。こうした作業で得られた知見を踏まえ、教員・学校向けの外国人保護者支援ハンドブックに含むべき内容や紙面構成等の検討を行い、ハンドブックの開発につなげる。 また、外国人保護者支援の役割を担いうる自治体や国際交流協会等の機関と比較した場合の、学校・教員の支援役割の特徴や優位性が何かについても検討を進める。特に、元々、保護者支援機能を内在させている幼稚園と保護者との関係性に着目することで、継続的で時機に応じた保護者支援の方法を明らかにしていく。こうした学校の外国人保護者支援機能の具体を解明することにより、支援の内容や方法について学校教員が学ぶことができる教職大学院の授業内容の開発につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
924,934円の残額が生じた。その理由は、コロナ禍による移動制限や面会制限等により、外国人保護者に対する調査が実施できなかったことにより、調査票の翻訳費用や調査データ整理等の人件費を執行しなかったためである。また、保護者支援の参考事例としているシンガポールについては、コロナ禍での渡航制限の解除が当初の見込みより遅れたことで、シンガポールでの実地調査ができず、そのための渡航費も支出しなかったためである。 コロナ禍での諸制限が緩和されたことから、国内調査、外国調査ともに、当初の計画に沿う形で今後実施予定であり、翻訳費用や人件費、渡航費も執行予定である。
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