研究課題/領域番号 |
22K02276
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
古川 雄嗣 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50758448)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 市民教育 / 道徳教育 / 共和主義 / ナショナリズム |
研究実績の概要 |
特に共和主義とナショナリズムとの関係に注目しながら、主に英米圏の現代政治理論研究における市民教育論の動向を整理・検討した。従来、公共精神や市民的徳をもって積極的に政治参加する共和主義的市民を育成しようとする市民教育は、その内容からナショナルな要素を排除しようとする傾向があった。ナショナルな文化やアイデンティティの共有を人々に求めることは、文化的・民族的なマイノリティの排除・抑圧につながると考えられたからである。しかし、近年では、その危険性には十分に注意しつつも、自由で民主的な政治社会が成り立つためには、その構成員はたんに抽象的な共和主義的理念だけではなく、一定のナショナルな文化とアイデンティティを共有している必要があるとする考え方が優勢になりつつある。換言すれば、共和主義的な民主政治は、その主体である市民が一定のナショナルな文化とアイデンティティを共有していることを、暗黙の前提にしている。こうした考え方に基づき、市民教育は「ナショナルな文化と伝統を共有するネイションを意識的に再生産しようとする教育」を含まなければならないとする、オーストラリアの政治理論家T. スートポマサンの市民教育論などを、主に研究した。その研究成果は、論文「共和主義、パトリオティズム、ナショナリズム:「市民」には、なぜ、どのような「愛国心」が必要なのか」(南勇佑吾との共著、道徳教育学フロンティア研究会編『続・道徳教育はいかにあるべきか:歴史・理論・実践・展望』ミネルヴァ書房、所収)にまとめられた他、日本教育学会第81回大会課題研究Ⅰにおける口頭発表「ナショナルな知の恣意性と必要性:市民教育論におけるナショナリズムに関する研究動向」でも一部報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの我が国の教育学研究はもとより、政治学研究の分野においてもあまり注目されることのなかった近年の英米圏の研究成果を紹介し、その意義を明らかにし得た点に顕著な成果が認められる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、政治学研究との連携を図りながら、主に英米圏の近年の研究の収集、調査を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に電子機器等の設備に使用する予定であった額に関して、喫緊の執行の必要がなくなったため。次年度以降に執行予定である。
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