研究実績の概要 |
日本においては外国にルーツを有する児童生徒数が増加し,学校教育及びそれに対応する教員養成のあり方が問題となっている。しかしながら,日本の教員養成制度は多言語化,多文化化には対応しているとは言い難く,多言語化,多文化化が進行する社会に対応する教員資格認定制度を構築すること,そして,そのために必要な研究上の基礎的視角を構築することが急務である。本研究は以上の認識から企図されたものである。そのような状況が先行する国としてアメリカ合衆国を措定し,同国の教員養成及び資格認定制度の改革について,言語政策や言語権を分析枠組みとして用いて,その特質と課題を明らかにすることにより,日本の教員養成及び資格認定制度改革に示唆を得ることが本研究の概要となる。 研究初年次にあたる2022年度は,研究計画にあるように,アメリカ合衆国の教員養成及び資格認定制度,そして同国の言語政策に関する基本的な文献を講読した。特にカリフォルニア州オークランド学校区における教授言語に関する政策に関する論争であるEbonics論争に関する文献や先行研究を収集し,分析を行った(J.David Ramirez eds. 2000, 2004等)。新自由主義的な改革が行われる中で,換言すれば学力試験の結果を重要視する政策が採用される中で,子どもの言語権と学力の両立がどのような論点を孕んでいるのか,あわせて教員の力量としてどのようなことが求められているのか,以上のことについての改めて確認することができた。 上記のような文献にあたることにあわせて実際の教員養成制度,資格認定制度についての渡米して現地調査を行う計画であったが,新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあり,その計画を2022年度は見送らざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる2023年度は,引き続き、アメリカ合衆国の教員養成及び資格認定制度,そして同国の言語政策に関する基本的な文献を精査したい。とりわけ日本における先行研究に空隙のあるEbinics論争についてさらに知見を深めていきたい。 あわせてアメリカ合衆国カリフォルニア州又はテキサス州に現地調査に赴き、一次資料の収集,分析を行いたい。それらの成果を学会での口頭発表や論文執筆に確実につなげるようにしたい。
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