研究課題/領域番号 |
22K02284
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
武井 敦史 静岡大学, 教育学部, 教授 (30322209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プロジェクト型学習 / 汎用的能力 / キャリア教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、公立学校において導入可能であり、自律的発展性をもつプロジェクト型学習プログラムを、自治体裁量とコミュニティとの協働を前提に開発・導入・発展させていくためのデザインデバイスを開発することを目的とし、①PBL導入に関する成果と課題を先行研究・実践から明らかにした上で、開発するデバイスの基礎条件を明らかにする、②連携する自治体と協働し、活動に必要な時間数の割当てや指導体制を含むプログラムの具体的構成を検討し、計画する、③開発したプログラムを試行した上で、本研究で開発したデバイスの効果性と課題について検証すること、④本研究の成果を国内外で報告し、さらなる研究の発展可能性を探ること、を具体的課題としている。 本年度はこのうち①PBL導入に関する成果・課題の検討と開発デバイスの基礎条件の解明、②連携する自治体と協働したプログラムの具体的構成の検討の2側面に力点を置いて、研究を推進した。 ①に関しては印刷冊子を作成し静岡県下でのカリキュラム実施をサポートする目的で配布を図った。 ②に関しては、申請計画において記載した下田市、牧之原市、沼津市においては協働の可能性を探った。下田市では中高一貫プログラムの研修を実施し、本カリキュラム実施の可能性を探った。牧之原市においては、2020年度より研究代表者との協働により開発がスタートしたプリズムカリキュラムの試行が同年より行われている。2022年度は、小学校段階の食育(アースランチプロジェクト)に関するプログラムが市内全小学校において実施されている。沼津市においては、一つの中学校区の(1中、2小学校)において国際理解・起業家教育を軸としたカリキュラムの試行が申請者との協働のもと行われている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度重点を置いて進めている①PBL導入に関する成果・課題の検討と開発デバイスの基礎条件の解明、②連携する自治体と協働したプログラムの具体的構成の検討、のうち、①については、ほぼ想定した計画通りに順調に研究は進行しているが、②については想定された計画にに対してやや遅れがみられ、また計画の一部で見直しも必要となりつつある。以下それぞれについて述べる。 まず①については、2022年度末までに書籍30点、論文40点ほどを収集し、解題を行っている。解題の結果、カリキュラムの内容については研究が蓄積されているものの、それを可能とする経営条件については、きわめて研究の蓄積は乏しく、本研究の問題意識については未開拓であることや、海外の学校においてより積極的な動きがみられることが明らかとなった。また、本研究の問題意識を円滑に実践につなげるため、印刷冊子『プリズムカリキュラム 学校・自治体単位ですすめるプロジェクト型学習開発・実践の手引き』を200部作成し、関心のある学校や教育委員会に向けて配布することで、実践の理論的基盤を構築した。 次に②については、第一に感染症の拡大防止の観点から、指導生徒の活動的な内容を伴うカリキュラムの開発は抑制傾向にあり、その結果として本研究の目論むプロジェクト型学習の導入に難色が示されたことと、各自治体・学校の管理職や中心的な役割を担っていた教諭が異動した結果として、再度の研究の趣旨と協力への理解に時間を要したことがあげられる。 ②については、今後対象自治体の変更も含めた検討が必要である可能性もあり、この点も含めて研究計画の練り直しを今後行う。
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今後の研究の推進方策 |
①で実施した理論研究の結果として、国内の先行実践事例はある程度つかむことができたが、本研究のテーマとするその経営基盤については不明なところも多く、今後フィールドワークも含めて、調査を行うことが考えられる。また、国外においても特に注目される実践事例については可能であれば視察等を実施することを検討している。 ②については、対象自治体の意向は最大限尊重しなければならない。研究計画に記載した、下田市、牧之原市、沼津市のいずれにおいても、信頼関係が悪化したという事態ではなく、現在も可能性が模索されているが、特に下田市においては、教育長が交代し行政の方向性にも若干の変化がみられたことから、研究計画通りの進捗は望めない可能性がある。 こうした状況を鑑みて新たに調査地域として、静岡県駿東郡小山町を研究対象に加えることを現在模索している。小山町においては、少子化の影響で現在学校再編を含む教育計画の見直しが進められており、研究代表者は当該プロジェクトの委員長をしている関係から、協力を得られる可能性はある。 当初の研究計画では、2023年度からは開発したプログラムを試行に入る予定であったが、自治体との協議・研究への協力依頼に力点を置きつつ、プログラムの効果測定の枠組みを確立することを本年度の研究の主要ターゲットとする。 そのうえで、調査研究に入る条件がそろった自治体については、2023年度より順次アクションの実施に入っていくことを企図している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、感染症の影響と学校・教員委員会の施策方針の転換もあり学校におけるカリキュラムの試行実践に課題が生じていることから、特に調査旅費および、調査結果の分析等に係る人件費については、次年度使用額が生じている。 また、文献資料の購入やテキストマイニングソフトの購入、および研究環境の整備に係る諸経費について、一部他の研究資金等を使って研究活動を推進できたことなどにより、本年度の支出を削減することが可能となった。 次年度には、本年度の遅れを取り戻すと同時に、他の自治体に対して本研究の理論的基盤を援用することができないか、働きかけることが想定されるため、旅費として使用する金額が増加することが見込まれる。さらに次年度においては、全国(海外)において、PBLについて新たな動きがみられるため、視察やフィールド調査を行うことも考えている。こうした研究活動の推進によって、研究経費は適正かつ効果的に使用する計画である。
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