研究課題/領域番号 |
22K02286
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
児玉 奈々 滋賀大学, 教育学系, 教授 (10389603)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 多文化教師教育 / 北米の教師教育 / 批判的人種理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで限られた枠内で行われてきた日本の外国人児童生徒教育を発展させ、多文化共生教育の担い手となる一般教員を育成する教師教育プログラムを提案することである。北米における人種や文化に対する教員の意識改革の内容を含んだ教師教育実践を参考に、教員養成段階及び現職研修の2種類の教師教育モデルプログラムを開発し、提案する。 当該年度は4年計画の1年目であり、教師教育や異文化理解研究の理論と実践に関する国内外の先行研究を考察し、本研究で用いる分析の枠組みを検討した。具体的には、アメリカの教師教育研究者による人種や文化に対する教員の意識改革を促す多文化教師教育の理論研究や北米の大学教育学部の多文化教師教育関連の授業実践を扱った研究論文を収集・整理し、批判的読解を進めた。 その過程で、多くの研究が批判的人種理論(Critical Race Theory)に依拠して議論を展開していることがわかった。一方、批判的人種理論は昨今の北米の学校教育現場において問題視されている理論であり、アメリカでは批判的人種理論に基づく学校教育活動の禁止に踏み切る州や、カナダでも批判的人種理論に依る多文化教師教育の採用には慎重な姿勢をとるべきとの意見が学識者から表明されていることも判明した。 このことから、批判的人種理論についての理解を深めておくことが本研究課題を進める上では必須の作業であるという考えに至り、人種差別や偏見を扱った社会心理学の文献や批判的人種理論に関わる社会学の知見を広く活用しながら、賛否両論の立場から批判的人種理論を考察することに取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が目的とする日本における多文化教師教育モデルプログラムの開発のためには、参考にする北米の多文化教師教育について理論と実践の両面から理解を深めた上で、多文化教師教育のあり方を提示していくことが必要であると考えている。北米の多文化教師教育に関わる先行研究の文献収集と批判的読解の作業は順調に進展しており、これらの文献の批判的読解の過程で新たに必要となった批判的人種理論の考察作業についても先行研究や関連文献を参考に少しずつ進めている。
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今後の研究の推進方策 |
北米の多文化教師教育が批判的人種理論に依拠していることを踏まえて、主に先行研究を用いて、賛否両論の立場から批判的人種理論を広く客観的に考察していき、多文化教師教育のあり方を検討していく。 今年度は、アメリカ同様に批判的人種理論の多文化教師教育への導入に関わる論争が起こっているカナダの事例を用いて、学会で研究報告を行い、教育現場における批判的人種理論の課題を整理し、批判的人種理論に依る多文化教師教育の今後の可能性について考えていきたい。また、北米の大学における多文化教師教育の実践についての海外調査の準備を進め、実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、当該年度あるいは次年度のいずれかの年度に、アメリカ及びカナダで海外調査を実施するための外国旅費を計上していたが、当該年度の主たる研究計画としている先行研究調査の過程で新たな調査課題を追加する必要が生じたため、新規調査課題に関わる先行研究調査を優先し、海外調査は次年度に先送りすることとした。 当該年度未使用額は、次年度の海外調査の外国旅費として使用することを計画している。
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