研究課題/領域番号 |
22K02293
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
嘉納 英明 名桜大学, 国際学部, 教授 (30449962)
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研究分担者 |
山城 千秋 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10346744)
入江 優子 東京学芸大学, その他部局等, 准教授 (40865599)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学校と地域の協働 / 日本語教室 / 公民館 / 日本語学校 / ネパール人 / 居場所 / 外国籍の児童生徒 |
研究実績の概要 |
沖縄の多文化社会の進展を象徴するように、インターナショナルスクールやフリースクール等は増加し、沖縄の児童生徒だけではなく外国籍の子どもの進学先ともなっている。外国につながる児童生徒の実態を把握するために、読谷村や北谷町、沖縄市の小学校の日本語教室を訪問した。沖縄市では4校の小学校に日本語教室が設置され、児童の日本語指導を進め、定期的に日本語教師の情報交流会が開催されている。長期休業中の児童の日本語能力の低下、中学校へ進学後の支援の弱さ等が課題としてある。また、先進地の横浜市及び福岡市の実地調査を行った。 那覇市若狭の多文化共生への取り組みについて、公民館とネパールの若者との交流事業を手がかりに基礎的調査を実施した。若狭には、日本語学校が3校立地し留学生の多くがネパール人である。公民館では「地域組織に属しない人々への支援」を考え、沖縄ネパール友好協会と連携することで、沖縄とネパール相互の文化交流事業を公民館で実施している。本研究が主眼とする家族移民の子弟教育は、ネパール人の多くが単身者であるため、若狭の小学校にネパールの児童は在籍していなかった。しかし、いずれは子弟教育が喫緊の課題となり、若狭の多文化化の深化とともに、外国籍児童の教育の充実が望まれる。 貧困や外国にルーツを持つなどの環境的困難や不登校の長期化など社会的孤立を抱える子どもの包摂について、学校と地域の協働の仕組みに着目しながら研究を進めている。2022年度は不登校経験者等の校区外就学が増加している名護市の小規模特認校を事例に、自治会毎の豊かな伝統・自然文化を残す地域の学校が、コミュニティ・スクールとして学校区単位でふるさと学習などの地域連携を進める中で生じている校区外就学者の包摂機能や葛藤などを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルスが終息にむけている中、3者(嘉納、山城、入江)の研究は、おおむね順調に進展している。なお、宮古島や石垣等の島嶼における多文化状況についての調査は、令和5年度に実施する予定である。入江の名護市調査は進展し、その他の自治体の調査研究も計画的に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
外国籍の児童生徒の地域支援の実態について、子どもの居場所における支援を参与観察により把握する予定である。沖縄の児童生徒と共に、外国籍の子どもは、宿題の支援等の学習支援だけではなく、沖縄の伝統的な芸能であるエイサー活動に参加する等して、地域の住民と交流を深め、関係性を深めている。沖縄市の居場所の事例を丹念に検証する。 沖縄の大手コンビニで働くネパール人は、約400人と大多数を占め、県民とネパール人との日常的な異文化接触は増している。今後は、米軍基地関連の外国人の子弟教育に限定せず、那覇市のニューカマーの定住過程、さらに宮古島や沖永良部島のフィリピン人コミュニティと教育など、島嶼の多文化化の問題にも関心を広げていく。 2023年度も引き続き名護市の事例研究を深めるとともに、浦添市の中学校区で組織する子ども支援部会(構成員:自治会、民生委員、コミュニティソーシャルワーカー、子どもの貧困支援員、元教職員、小中学校生徒指導担当教員等)の参与観察も進めていく。これらを通して、沖縄の伝統的な自治会・集落公民館の機能と学校・学校区、市町村域で進める公的な事業との機能構造的な違いや葛藤、重層性の持つ意味などについて検討を深めることで、沖縄型の学校地域連携の姿を探究していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、コロナ禍による沖縄県内外調査が十分できなかったこと、また、学会もオンラインによる発表であったため旅費は使わなかった。令和5年度は、宮古島や石垣島調査、学会開催が対面で実施される予定である。
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