研究課題/領域番号 |
22K02296
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
春日 秀雄 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (50387081)
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研究分担者 |
上田 麻理 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (70786409)
大鶴 徹 大分大学, 理工学部, 客員教授 (30152193)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人工歓声付加 / 打球音判別 / 音響的特徴 |
研究実績の概要 |
音を使ったトレーニングシステムの構築の一環として,野球選手のモチベーション向上を目的とした人工歓声付加システムの開発を行った[1][2].これは,試合またはバッティング練習時に使用するシステムで,打者が良いバッティングをした際に人工的な歓声や拍手を球場の選手に向けて流し,選手の集中力やモチベーションを向上させる効果を与えるものである.本システムでは,バットに打球が当たった際の音の特徴を分析し,『良い当たり』と『良くない当たり』を識別している.それによって,バッティングの良し悪しに応じて異なる音声を流すことができるようになっている.特に良い当たりをした際に特別な音声を再生することで『特別な報酬を得た感覚』を付与し,練習におけるモチベーションを向上させる効果が期待できる. 野球における打球音の分析としては,内野や外野といった異なる守備位置における音の特徴の分析を行った[3].本研究では,打者のバッティングの特徴と音の関係,打者の競技レベルや経験年数と打球音の関係についても分析を行っている.ここでは,競技レベルや経験年数によって,打球音の周波数特性が異なる可能性が示唆された.本研究の成果は,打球音の聞き分けによってボールの方向や距離の予測が可能になることを示唆している.このことから,聴覚トレーニングによって野球選手の能力を向上させるシステムを構築できると考えられる. [1] 野球選手のモチベーション向上のための人工歓声付加システムの開発,音講論(秋),2022. [2] 野球競技における打球音の音響学的特徴 その2 -競技者による打球音判別と聴感評価-,音講論(春),2023. [3] 野球選手のモチベーション向上のための人工歓声付加システムの開発 その2 -バッティング練習時の人工歓声付加の効果-,音講論(春),2023.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野球競技における打球音(打者がボールを打った音)の音響的な特徴を解析するために打球音のデータを多数収集した。そして、『良い当たりをした時』、または、『当たりが良くなかった時』の打球音の音圧レベルや、その周波数特性を計測・収集したデータから明らかにした。また、守備位置ごとの音響学的な特徴を求めるために、ホームベース、セカンドベース、外野センター(ホームベースから正面100mの地点)、外野ライト(ホームベースから右前方75mの地点)、外野レフト(ホームベースから左前方75mの地点)での音響計測を実施した。合わせて打者のスイングの情報(速度・軌道・角度)を取得し、スイングと打球音の関係を調査した。また、競技者のレベルや経験年数と打球音の関係についても調査を行った。以上の計測実験により、動きと音のデータの計測方法については十分な知見が得られたと考えられる。また、動きと音の定量的な関係についても分析は進んでおり、分析結果を活用したシステムの構築を始めている。 音を使ったトレーニングシステムおよびアプリケーションの開発としては、その第一弾として野球選手のモチベーション向上を目的とした人工歓声付加システムを開発している。まず、球場に設置されたスピーカーから合成音を流す音響ARのシステムを構築した。そして、そのシステムを用いて練習中の選手に人工的な歓声や声援を送り、練習のモチベーションや集中力を向上させる実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
打球音のデータ収集は順調に進んでおり、データの分析をより深く進めることとなる。音に合わせた動作の解析は今後も続ける必要があり、音データと対応した動きのデータを収集する。また、音を用いたトレーニングシステムを作成するために、どのような音がトレーニングに活用できるかを詳細に調査・検討する必要がある。従来より、感覚的な音を頼りにプレイする選手は多くいるとされており、その感覚的な情報を定量化・分析するための調査や実験を行う必要がある。競技レベルの高い選手の音の活用法を調査・分析するためにプロまたはプロに近いレベルの選手を対象にしたヒアリング調査を可能であれば実施する。 トレーニングシステムまたはアプリケーションの開発としては、音からボールの方向を予測する技能の習得を目指すアプリケーション、雑音のある環境でも音を聞き分けられる能力の習熟を目指すアプリケーションの開発が考えられる。これらは、競技レベルの高い選手の音の活用法を分析することで、実用的なスキルの修得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していた出張を行わなかったため。また、実験に際して人件費を用いなかったため。 次年度使用額は、実験のための人件費または謝金として使用する。
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