研究課題/領域番号 |
22K02331
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡田 菜穂子 (山本菜穂子) 山口大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (90547142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 障害学生 / 修学支援 / 高等教育 |
研究実績の概要 |
本研究では、障害学生の増加や支援ニーズの多様化、支援の遠隔化等の動きに、大学がどのように対応しているのかに関して資料収集・調査を行い、近年の障害学生支援をとりまく状況の変化が支援体制に与える影響を整理・分析することを目的とする。 研究初年度である令和4年度は、近年の障害学生修学支援の動向を確認すべく、全国調査(日本学生支援機構「障害学生の修学支援に関する実態調査」)の結果を参考にしながら、支援現場に目を向け現状と課題を整理した。 全国調査によると、関連委員会の設置、担当部署の設置、担当者の配置等を行っている大学の割合は高く、ほとんどの高等教育機関で何等かの障害学生支援体制が整備されている。高等教育機関に在籍する障害等のある学生(障害学生)数は増加の傾向にあるが、障害種ごとにみると身体障害については調査開始当初から安定して一定数確認されているのに対し、精神障害・発達障害・病弱・虚弱の区分については年々増加していることから、連動して支援ニーズも多様化していると予想される。 このような背景を受け支援現場では、複数の新たなニーズへの対応が求められている。大学等によっては、少数の特別なニーズへの個別対応から始まった障害学生支援が、多数の多様な学生への支援の必要性に迫られる事態となっている。授業中支援の方法は、授業形式に拠る側面も大きいが、感染症拡大下での遠隔授業の経験を経て、配慮としてのオンライン対応をどう位置付けていくのかも検討課題の一つである。また、授業に関する支援では、人的支援に加えて支援機器を活用するケースの増加が見られ、支援のICT化がうかがえる。 今後は、本年度の成果として得た障害学生の増加・支援ニーズの多様化・支援のICT化をキーワードに、複数大学の状況に関する情報収集を行い、動態分析へと繋げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高等教育機関における障害学生修学支援の現場に目を向け、障害学生の増加・ニーズの多様化・支援の遠隔化といった動きが支援体制に与える影響を整理・分析することを目指す。 令和4年度は、その後の調査の地盤となるような資料の整理を主な目的とした。全国調査の結果の確認と、支援現場での現状を振り返る作業により、近年の障害学生修学支援の動向を確認するという目的を概ね達成できていることから、概ね順調に進んでいると評価した。 本年度の成果を、次年度以降の資料収集と研究最終年度の分析作業に活かしたい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、高等教育機関における障害学生支援関連の資料収集を行いながら、最近の支援動向への対応状況を確認するため、複数大学等に関する調査を行う。 研究2年目(令和5年度)には、支援担当者へのインタビューを予定している。インタビュー調査では、令和4年度に収集した障害学生支援に関する情報をもとに、複数大学の支援担当者への聞き取り調査を行う予定である。インタビュー対象とする大学の選定は、支援体制の整備時期、支援体制の特徴、支援対象となる障害学生数等を参考とする。 なお、本研究では支援体制の動態をとらえようとするため、インタビューでは、兼ねてから支援体制整備を行ってきた大学については体制の変更がなされているか否か、最近になって体制を整えた大学については体制づくりの際に重要視された要素は何かに注目することとしたい。 最終年度には、インタビュー調査結果を整理し、障害学生の増加・支援ニーズの多様化・支援の遠隔化等がもたらす影響を分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費は概ね予定通り執行したが、一部余剰分が発生した。具体的には、情報収集について大学間ネットワーク等を中心に遠隔で実施したため関連費用が発生しなかったこと、また物品購入費を抑えられたために差分が生じたことによる。 本年度の余剰分は、次年度に繰り越し、学会参加費や調査旅費を補填できればと考えている。
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