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2023 年度 実施状況報告書

日本における移民のトランジション:国境を越えた移動経験がライフコースに与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 22K02334
研究機関神田外語大学

研究代表者

伊藤 未帆  神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (90466821)

研究分担者 奥田 若菜  神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (10547904)
知念 渉  神田外語大学, グローバル・リベラルアーツ学部, 准教授 (00741167)
和田 理寛  神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (70814325)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード移民 / 青年期 / トランジション / ライフコース / 日本語学校 / 留学生 / 技能実習 / 出稼ぎ
研究実績の概要

本研究は、日本社会に暮らす、主としてベトナム、タイ、ミャンマー、ブラジルからの移民たちに焦点を当て、彼らのライフコースを解き明かすことを目的とする。これまでの移民研究では、居るべき場所/戻るべき場所としての「定住」を暗黙の前提にしたうえで、移民をナショナルな空間からの「逸脱者」とみなす視座を主流とする一方で、アイデンティティや主体性のあり方と密接な関連を持つ移民自身のライフコースについては十分に検討されてこなかった。
本研究は、複数の国から日本にやってきた移民(技能実習生、留学生を含む)にインタビューを行い、若者から大人へと成長する人生の重要な時期(移行=トランジション期)に国境を越えるという経験が、彼らのライフコース形成にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするものである。
第二年度にあたる当該年度(令和5年度)は、現在日本で暮らす移民たちが、どのように後期青年期の時期を過ごし(もしくはかつて過ごし)、そのプロセスにおいて、国境を越えた移動経験がどのような影響を及ぼしたかについての調査研究を遂行した。
具体的には、①神田外語大学に在籍する若年層移民への聞き取り調査、②日本滞在を終えて母国に帰国した移民経験者への聞き取り調査、③技能実習生送り出し機関への聞き取り調査、④国、および都道府県(千葉県)、市町村がそれぞれ公表するデータ収集と分析、⑤移民とライフコース、トランジションに関連する先行研究の整理と精査、という5つの軸に沿った研究活動を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究活動実施二年目にあたる当該年度(令和5年度)は、現在日本で暮らす、または過去に日本で暮らした経験を持つ複数人の移民たちを対象に、彼らがどのような経路で日本に来日し、日本社会の中に定位されてきたのか、また、若年層という彼らの人生の一時期において、国境を越えた移動経験がどのような影響を及ぼしたのかといういくつかの観点から、聞き取り調査を行った。
具体的な活動内容は以下の通り。 ①神田外語大学に在籍中の、東アジア、東南アジア、南アメリカからそれぞれ来日した移民当事者への聞き取り調査(令和5年10~12月)、②日本での就労を経験したベトナム人元技能実習生への聞き取り調査(令和5年8月)、③ベトナム人技能実習生の外国送り出し機関への聞き取り調査(令和5年8月)、④他機関からゲスト講師を招聘し、外国人技能実習生をめぐるライフコース形成についての研究報告、意見交換、およびディスカッション(京都大学大学院ジェッサダコーン・ガラポン氏による研究報告「タイ人技能実習生の日本滞在経験がその後のライフコースに与える影響」、令和5年5月)、⑤国、都道府県(千葉県)、市町村が公表している外国人居住者および就労状況に関するデータ収集と分析、⑥移民とライフコース、トランジションに関連する先行研究の整理と精査。
これらの研究活動の進捗状況や成果については、月1回~2回程度のペースで研究会を実施し、研究代表者・研究分担者間での調査報告と情報共有を行ったうえで、活動計画全体の進捗状況の確認と、次なる活動方針の策定、実施へとつなげていくというワークフローで行った。

今後の研究の推進方策

①研究活動実施三年目にあたる令和6年度は、さらに積極的に、日本国内に居住する移民当事者、および彼らが所属する各機関(学校、企業、自治体等)への聞き取り調査を実施する。ベトナム、タイ、ミャンマー、ブラジルからの移民を主な調査対象とするが、必要に応じて、その他の国をルーツとする移民層にもインタビューを行う。
②また、令和4年度と令和5年度に得られた外国人居住者および外国にルーツのある人々についてのデータ整理と分析を行い、マクロレベルで見た日本の移民層をめぐる実相把握に努める。
③①、②と並行して、日本から帰国したベトナム、タイ、ブラジルの移民たちを対象に、それぞれの国に赴いての追跡調査を行うための準備を進める。①、②の作業を通じて得られた情報をもとに、調査対象国内での移民送り出しの実態に関する予備的調査、および現地研究者とのネットワーク形成に努める。
これらの過程を通じて、移民のライフコースが、来日前、来日中、帰国後においてどのように形成され、変化していっているのかという問いを明らかにする。その上で、彼らのトランジションにおいて、空間的な移動の経験が与えた影響と意味を引き続き明らかにしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画によれば、研究活動二年目にあたる令和5年度は、現在日本国内に居住する移民層、および日本での滞在経験を持つ元移民層に聞き取り調査を行うことを通じて、日本社会の一部として存在する(または、した)移民たちが、後期青年期の時期を日本でどのように過ごし、そのプロセスにおいて、国境を越えた移動経験がどのような影響を及ぼしたかを明らかにすることを目指した。
当該年度についてはほぼ計画通りに進展したと言えるが、量的にみれば、聞き取り調査に応じてくれた対象者はまだやや限定的であり、日本国内に居住する移民層が計8名、日本国外(ベトナム)に住む元移民層は計4名にとどまったため、次年度使用が生じた。令和6年度以降は、さらに積極的に日本国内外の移民層にアプローチし、インタビュー対象者の数を増やすとともに、これまでの聞き取り調査の過程で明らかになった分析視角をさらに精緻化していくことを計画している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] どのように誰が周辺化されてきたのか2024

    • 著者名/発表者名
      知念渉
    • 雑誌名

      教育

      巻: 938 ページ: 5-13

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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