研究課題/領域番号 |
22K02353
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
油布 佐和子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80183987)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教育労働 / パターン化した教育行為 / 意味付けの低下 |
研究実績の概要 |
本研究は、制約の中で、教師がどのように日常の教育活動を行っているかを明らかにするために企図された。例えば、新しい学習指導要領は、これまでの教師の指導の180の度転換を図るものであり、資源が配分されない中でそれを開発し、実行せねばならない。すでに、正規の勤務時間をはるかに超える中で、教師はこれをどのように行っているのか。 先行研究の中には「総合的な学習」が導入されたときに、同じような状況の中で、結局、それを開発したり教師自身が考えるのではなく、組織的なパターン化の下でこれが実行されたことが示されている(川村2004)。本年に実施したインタビューにおいても、類似する傾向がみられた。すなわち、コロナ下の時期に積極的に導入されたICT/デジタル教材などを利用するなどがそれにあたる。ある小学校教員からは「指導書」すら読む時間がない、という意見が聞かれた。 要するに、多忙の中で何かに新たに取り組む余裕はなく、タイムリーに示されているICTを利用するということである。また、これは教育全体への方針でもあるんで、それに疑問を抱いたり、依拠しているというような意識もないことが分かった。 多忙の中で、便利なツールに頼る、また、そのことの意味自体を問わない、というのは、教育行為への、何らかの<意味付け>というようなことが失われているのではないかと推測される。 本年度に実施したインタビュー調査は、調査の時間も短く、調査対象者もごくわずかであったことから、次年度は、その数を増やすことを検討し、教師の教育行為への意味付けという点から、検討を進めてみたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィールドワークや対面でインタビューが難しいうえ、大学の業務に追われ、また、私事でも時間がとられたため、十分な調査ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
勤務時間をはるかに超える長時間労働は、同時に<労働強化>も伴っている。本研究は、この<労働強化>の部分を明らかにしたい。 インタビュー調査を通じて、「与えられた時間と業務との間にあって、教育労働に意味づけをしない教員が増えている」のではないかという仮説が妥当なのかどうかを、検討することをまずは目的としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナのために出張を控えていたことが大きな理由である。フィールドワークを計画通りに実施したい。
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