研究課題/領域番号 |
22K02368
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
増田 広美 (植村広美) 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (10614000)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多文化共生 / 移民 / 統合 / 階層的地位 / 社会関係 |
研究実績の概要 |
本研究では移民のなかでも従来、必ずしも分析の対象とはならなかったものの在留者数の最も多い中国出身者に焦点をあて、「統合」の観点から社会経済的統合(教育、職業的地位、賃金面での階層的地位達成や社会関係の形成の度合い)について、依拠する準拠集団の違いを踏まえた上で考察を行うことを目的としている。なお、統合とは多義的な概念であるが、一般に古典的な同化概念を超えるものであり、移民の統合は「移民が当該社会の主要な制度に参加する過程」と定義される。 移民の子どもの教育達成はどの国でも一般にすべての教育段階で低いとされ、日本では漢字の習得が学力形成にとって大きな障壁になると指摘されている。しかし、自身が2017年から運営する移民の子どもの学習支援のなかで、漢字圏である中国出身の子どもにも同様の傾向が確認され、日本で生まれた二世、三世であっても総じて学力が低く、高校進学を果たせないケースも少なくない。そこで、一年目では移民と日本人との間に顕著な学力差が生まれ、結果的に社会経済的統合が阻まれる要因について、子どもたちの日本語運用力に加えて、依拠する準拠集団による文化の違いについて調査を実施した。その結果、日本生まれの二世や三世であっても、来日後、数年しか経っていない子どもに比べて日本語能力が劣るケースも少なくなく、とくに学習言語においてその傾向が顕著であることが分かった。また、来日後どの程度経っているかという時間軸とは関係なく、本人が居心地のよいと感じる準拠集団には大きな個人差があり、主流文化、多文化、エスニック文化といった集団による習慣や価値観の違いが大きく子どもに影響を与える様子が浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R4年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、移民の子どもを対象とした調査を実施するにあたり大きな制約があった。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度以降、調査研究の実施にあたり大きな社会的な制約はないとの見通しの下、本来の計画通りに研究を遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、現地調査の実施に大きな制約があり、当初予定していた旅費が大幅に下回った。R5年度は、こうした社会的状況から大きく影響を受けないという見通しの下、R4年度に実施予定だった調査も研究計画に入れて進めていく予定である。
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