研究課題/領域番号 |
22K02401
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研究機関 | 大阪信愛学院大学 |
研究代表者 |
谷原 舞 大阪信愛学院大学, 教育学部教育学科, 講師 (00898207)
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研究分担者 |
岡野 聡子 奈良学園大学, 人間教育学部, 准教授 (50623964)
小久保 圭一郎 倉敷市立短期大学, 保育学科, 教授 (10461774)
田中 卓也 育英大学, 教育学部, 教授 (90435040)
中島 眞吾 中部大学, 現代教育学部, 講師 (80781020)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 絵本 / 読み聞かせボランティア / 乳幼児 / 読書活動推進 / 地域福祉 / 子育て支援 / 研修プログラム |
研究実績の概要 |
本研究は,実態調査を通して読み聞かせボランティアを支援し,その質の向上を図るためのプログラムを開発するものである。令和4年度に行った読み聞かせボランティアが抱える不安感・困難感とそれに対する支援(研修)に関するアンケート調査をもとに質問項目を精査し,令和5年度には全国調査を実施した。 6254件配布し,回収数は1329件,回収率は21.25%であった。有効回答数は1,281件,有効回答率は20.48%であった。得られた結果について,量的分析と質的分析を行った。 量的分析ではカイ二乗検定を行った結果,「活動上での困難さ」について,「絵本に関する知識不足」,「選書に関する知識不足」,「経験年数による意識や技量の差」が有意に多く,逆に「参加者に応じた選書の難しさ」は有意に少なかった。また,「保護者対応の難しさ」が5年未満の者で有意に少なく10年~20年未満の者で有意に多く,「グループ内の意識統一の難しさ」が20年以上の者で有意に多かったことなどから,経験年数により活動における役割の変化がうかがえた。さらに,グループ内の絵本の学び合いの機会の有無と「参加したい研修内容」の各項目をクロス集計し,フィッシャーの正確確立検定を行ったところ,学び合いの機会がない者が「言葉のリズムやノリを取り入れた絵本の活用を知る」項目の選択が多かったことから,研修などの実践の機会を通して直接学ぶ必要があると考察した。 質的分析では,a.選書の難しさ,b.絵本の知識不足に対する不安感,c.実践に対する不安感,d.保護者対応への不安感,e.参加者募集の難しさ,f.ボランティアとしてのあり方の6項目のカテゴリーが生成された。 以上より,読み聞かせボランティアの研修プログラムに取り入れるべき研修内容や,経験年数による対象者を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に実施した読み聞かせボランティアが抱える不安感・困難感に関するの研究結果を踏まえ,質問紙の精査を行ったうえで全国調査を実施することができた。研修プログラムの構築については,①読み聞かせの意義と課題,②音読技術,③選書方法の3つのテーマについて,研究代表者,分担者とで研究を進めている。①読み聞かせの意義と課題については,前年度に実施した質問紙調査結果を質的コーディング分析することにより,ボランティア実施者が抱える意義を明らかにした。②音読技術については,日本語の絵本だけでなく,英語絵本の読み聞かせについて,保育学生を対象とした実践研究を行った。③選書方法については,選書に関する不安感・困難感で挙げられていた「良い絵本とは何か」に着目した研究を行った。さらに,前年度の読み聞かせボランティアが持つ不安感・困難感の質問紙調査結果をもとに,研修プログラムのモデルケースを提示した。 以上より,当初計画をしていた実態調査,実践研究,研修プログラムの構築まで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に構築した研修プログラム内容を具体化し,プログラムを実施し評価を行う。 研修内容は,これまでの質問紙調査で得られた結果から「読み聞かせボランティアの意義」,「良い絵本とは何か」,「ノリやリズムの取り入れ方」,「音読技術」,「人権やジェンダーに関する絵本の選び方」,「英語絵本の読み方や選書」,「保護者対応」,「チームビルディング」等を取り入れる予定である。募集の際は,令和5年度の全国調査結果を踏まえて,研修内容に応じて異なる経験年数の対象者とすることを検討している。 研修プログラム実施後に,参加者にはアンケート調査を行い,研修プログラムの効果検証を行ったうえで改善を図り,最終的な研修プログラムを確立する。現在,アンケートの作成と研究倫理申請のための準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査に関する費用,令和4年度の報告書作成に関する費用が,当初計画していた当該年度分の額よりも多くかかると想定し,前倒し支払い請求を行った。しかし,前倒し申請をした全額を使用することはなく,次年度使用額が生じた。次年度は読み聞かせボランティアを対象とした研修プログラムの実施と評価を行うことになるが,その際に講師に支払う交通費として使用する予定である。
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備考 |
谷原舞、岡野聡子「令和4年度(2022)読み聞かせボランティア支援および質向上のための研修プログラム開発1 報告書」p.1-56 2023年12月
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