研究課題/領域番号 |
22K02463
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
田中 淳一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 特命教授 (00212035)
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研究分担者 |
高橋 眞琴 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (30706966)
牛込 彰彦 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 教授 (80528331)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 発達障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 口渇 / グルタミン酸作動性神経 / リラクセーション / ストレスコーピング / 正中視索前核 |
研究実績の概要 |
発達障害者は感覚異常を伴うことがある。口渇感覚の異常は身体の水分維持に重篤な影響をもたらすことから、発達障害者の支援に必要な基礎的知見を得るため動物を用いて検討した。ポリエチレングリコールの皮下投与による細胞外液量の減少により誘起される口渇反応及び体液量の恒常性維持に、脳内の正中視索前核(MnPO)のグルタミン酸(Glu)作動性神経が関与していることを明らかにした。このMnPOのGlu作動性神経による口渇反応の調節において、体液量の減少によりN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型受容体及びnon-NMDA型受容体を介するGlu作動性神経活動の上昇が飲水行動の引き金となり行動が開始され,体液量が一定量になるとGlu作動性神経活動が減弱し口渇反応が停止する可能性を示した。これらの内容について,海外の研究者も来訪する学会で報告した。 発達障害者の支援についての実践研究として、特別支援学校の自立活動の時間における自閉症スペクトラム障害(ASD)生徒とダウン症生徒が一緒に取り込むうつ伏せ体操の効果について行動的及び生理的側面から検討した。両生徒共に相手のペースに合わせることができるようになり、人間関係の形成が促されたのみならずリラックス効果や情緒の安定を窺うことができ、この体操が学習効率や行動制御に役立つことことが示唆された。また、知肢併置特別支援学校でのASD生徒へのスライムを用いた触覚刺激や漸次的筋弛緩法の効果によるストレススコーピングについて検討し、これらの実践が社会的相互作用や活動への応答性が見受けられることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に計画していた発達障害者の感覚、特に口渇感覚と脳内神経伝達物質との関係について中枢性制御のメカニズムを考察することができ、発達障害のある子どもたちの支援上の手がかりとなる基礎的知見を得ることができた。また、実践研究において、自閉症スペクトラム障害生徒に生理学的指標の使用や行動学的分析を実施することでリラックス効果や情緒の安定などについての知見を得られることから、2024年度の発達障害支援の関わる効果測定に役立つ知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、発達障害研究協力者の授業前後、教員や保護者と会話等の様々な場面における情動面への変化について、愛情ホルモンと言われるオキシトシンを生理的指標とし唾液中のその濃度を測定することで、効果的な支援のあり方や注意すべきことなどについての検討を行う。また、発達障害研究協力者の対面学習支援について、学習課題遂行時におけるストレス度・自律神経活動のバランスの測定を行い、授業中の支援のあり方について調べる。 上記のことを踏まえて、3年間の成果をまとめ、発達障害のある児童・生徒への支援について総合的に考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の動物を用いた実験的研究及び次年度の実証的研究に向けた調査において、実験設備等が整っていたため未使用の額が生じた。次年度の生理的指標の分析に相当の費用を要するため、未使用額を当てることで研究を遂行する。
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