研究課題/領域番号 |
22K02489
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
久保 元芳 宇都宮大学, 共同教育学部, 准教授 (90451707)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 成人への移行期 / 性教育 / セクシュアリティ教育 / 包括的 / 教科等横断 / PREP |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,成人への移行期に焦点を当てた学校での包括的な性教育として,米国保健福祉省のPersonal Responsibility Education Program(PREP)の理念と展開例を参考にしながら,日本における教科等横断的な性教育プログラムを作成し,中学校と高等学校を対象とした介入実験授業を通じて,教材や指導法の妥当性を検証することである。 2022年度は,まず,欧米の性(セクシュアリティ)教育の現状として,各国の教育課程の基準における位置づけ,扱われているテーマ,地域との連携等について,BZgA,UNESCO,FYSB等の専門機関が公表している最新情報をレビューした。その結果,「包括的」とみなすための条件,各国の社会・文化的背景を踏まえた教育実践上の工夫や課題等について把握できた。 続いて,米国PREPの理念に準拠して作成され,科学的な手法に基づく効果が報告されているいくつかの教育プログラムの理論的枠組と実践レベルの教材や指導方法の把握を行った。具体的には,①意思決定プロセスを重視し,採択率が最も高い"Making Proud Choices!",②社会性と感情的な学習(SEL)の理念に基づき,健全な人間関係の構築を重視した"Get Real"の両プログラムの一式を入手して吟味した。その結果,日本の性教育においても充実が求められている「性的行動のリスク評価」「ライフプランニングの視点」「性的同意の理解」等のテーマについて,日本の教育課程に応じた教育実践への応用可能性の知見を得た。 なお,「ライフプランニングの視点」を取り入れた性教育については,その内容に留意しながら大学生を対象とした試行を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,欧米の性(セクシュアリティ)教育の実状として,各国の教育課程の基準に応じて多様な位置づけがなされていること,各国の社会・文化的な背景から直面している課題もあることなどを把握できた。これは,日本の教育課程や社会・文化的な特徴に応じた教科等横断的な性教育プログラムを作成していく上で考慮すべき重要な視点と言える。 また,米国PREPの実践レベルでの教材や指導法等の例を入手,吟味できたことで,2023年度に実施する,日本の中学校および高等学校における具体的な指導計画,教材,指導方法の作成にあたって大いに参考となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,まず,前年度までに収集された情報を基に「性的行動のリスク評価」「ライフプランニングの視点」「性的同意の理解」等のテーマについて,日本の教育課程の基準に応じた教科等横断的な包括的性教育の枠組み(どの教科等のどの内容に配置するか等)を明確化する。授業実践を行う教科等としては,保健体育科,家庭科,道徳家,特別活動(学級活動)等を予定している。その上で,2024年以降の介入実験授業の対象となる中学校および高等学校の教員等(研究協力者)との協議によって,具体的な指導計画,教材,指導方法を作成していく。 また,上記のような教科等での集団指導との連携の視点から,生徒のニーズやリスク要因に対応した、保健室等での個別指導の進め方の提案も念頭に置きながら進めていく。 なお,こうした活動と並行して,近年,活性化の兆しがみられる包括的な視点での性教育の実践研究について,国内外の学会や研究会等で情報を収集し,本研究の特徴を明確化したり,介入実験授業の検討時の参考にしたりする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に予定していた米国の学校でのPREPの教育実践の参観と情報収集について,日程等の不都合の事情で延期したことにより,当該の旅費等が繰り越されたため(なお,実践レベルの多様な教材,指導方法等の情報はオンラインを通じて入手した)。2023年度は日本における包括的な性教育の指導計画等の作成を行うが,その際に米国を含む諸外国や国内の先行実践も参考にするため,その情報収集に必要な旅費等に充てる。
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