研究課題/領域番号 |
22K02522
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
曽余田 浩史 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60253043)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 学校づくり / 素材に随う / スクールリーダー教育 |
研究実績の概要 |
(1)デザインと実行を分離する質料形相論的モデルを批判し、住まう視点、素材に随う、編み手、予期的な先見、呼応などを特徴とするT.インゴルドのデザイン観と斎藤喜博の学校づくりとを照らし合わせることを通して、デザイン行為としての学校づくりの理論枠組みの明確化を行なった。インゴルドのいう「『つくる』において『成長する』」と「『成長する』において『つくる』」に照らすと、斎藤の学校づくりは後者の立場であり、事実の中から課題をつくり、その課題に向けて教師と子どもたちが共同し、たえず新鮮に創造していくことであり、学校が「成長する」とは、現状(起点)からめざす状態(終点)を実現することではなく、つねに新しい創造がなされていく変態(metamorphosis)である。 (2)教職大学院でアクションリサーチを中核とするスクールリーダー教育を行う3名のスクールリーダー教育者を対象に、①院生の課題研究を学校に位置づけることをどう捉えているか、②院生と学校とのずれをどのように考えているか、③課題研究を位置づけることに関する教育者の捉え方の違いが院生の力量形成の在り方にどのような意味を持つのかについて比較考察し、次のことを明らかにした。①位置づけるには、1:院生個人の関心や担当業務を取り扱う段階、2:学校経営計画の重点目標・取組を取り扱う段階、3:教職員の中に課題研究を据えていく段階の3つのレベルがある。②レベル1と2はずれはないほうが望ましいと捉えるが、レベル3はずれは必然であり、ずれに院生が気づき・向き合えるようにし、それを修正し価値づけし進化していくことがスクールリーダー教育の中心だと捉える。③位置づけることを教育者Aは「学校全体を巻き込む」、Bは「自分のものにする」、Cは「点を線にしていく」と語ったが、教育者の前提にある組織・経営観の省察がさらに必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)理論的考察に関しては、ある程度の文献収集を行うことができ、デザイン行為としての学校づくりの理論枠組みの基礎的な概略をおさえることができた。 (2)聞き取り調査については、コロナによる学級閉鎖によって学校訪問が実施できなかったり、予定していた調査対象者の都合が悪くなったことなどが重なり、遅れている。ただし、予定を変更して、学校づくりに関する実践記録等の資料収集を進めることができた。 (3)教職大学院におけるスクールリーダー教育については、3名のスクールリーダー教育者の事例をもとに、現状把握をおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)デザイン行為としての学校づくりの理論枠組みの明確化・精緻化のために、鍵概念になると思われる「アテンションの再教育」に着目して、インゴルドを踏まえた経営学者R.チアらの文献、実践者の報告などを手掛かりに、理論的考察を行う。 (2)住まう視点、素材に随う等を大事にしていると思われる(元)管理職に対して、学校づくりに関する聞き取り調査を、「アテンション」に着目しながら、実施する。 (3)教職大学院におけるアクションリサーチを中核とするスクールリーダー教育について、学校づくりの動きの見方・捉え方(アテンションの再教育)を院生にどのように指導しているかに着目して、観察・聞き取り調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調査対象者との都合が合わず、訪問による聞き取り調査ができなかったため。今年度あらためて、その調査対象者との調整をおこない、訪問による聞き取り調査を実施する予定である。
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