研究課題/領域番号 |
22K02527
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
牧野 由理 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80534396)
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研究分担者 |
金子 一夫 茨城大学, 教育学部, 名誉教授 (70114014)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 美術教育 / 視覚イメージ / 教育掛図 / 美術教育史 / 東京造画館 |
研究実績の概要 |
2022年度は日本の〈学校用民間教育掛図〉を対象とし、教育掛図や掛図目録、文献資料の収集を行いつつ、博物・理科および図画科に関連する教育掛図の研究をすすめた。 文部省が明治初期に発行した博物図はアメリカ製掛図を模倣し羅列的な標本画であったが,明治41(1908)年に発行した《尋常小学理科掛図》と《高等小学理科掛図》は日本画家・飛田周山による透明感を感じさせる巧みな描写も含んだ絵画的な掛図だった。明治32年に東京造画館が発行した《世界動物獣類第一図》には73点,《世界動物獣類第二図》には58点の動物がバランスよく配置され描かれているが、原典調査をしたところ、ゴットヒルフ・ハインリヒ・フォン・シューベルトのNaturgeschichte des Tierreichs fuer Schule und Haus(学校と家庭のための動物界の自然史)の哺乳類図版であることが判明した。外国製の掛図をそのまま翻刻したのではなく,ドイツの博物書から図版を引用して背景を削除し掛図に仕立てたと推測した。明治41年に東京造画館が発行した《最新理科教授用掛図》は色彩豊かで立体的かつ絵画的な描写がみられた。これらは研究開始前からすすめていた研究だったものの、今年度、研究成果をまとめ学会誌(査読付)に投稿し受理された。 収集した『昭和十五年版東京集画堂出版目録』に掲載された題目から、東京集画堂では430枚という膨大な数の図画・手工掛図を発行していたことが判明し、題目名の分析から教科書・教師用書に準じた掛図が含まれていることが明らかとなった。図画科に関連する教育掛図の特質については、学会で口頭発表(第45回美術科教育学会兵庫大会「戦前の図画に関する教育掛図研究」)を行っており、2023年度に学会誌への投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育掛図や教育掛図目録、文献資料の収集を行うことができた。また博物・理科の教育掛図について論文として公表し、図画科に関連する教育掛図について口頭発表を行うことができた。そこで本研究はおおむね順調に進展できていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる2023年度は、図画・手工科に関連する〈学校用民間教育掛図〉を中心に実見調査・撮影・データ化を行い、その特質を明らかにする。とくに東京集画堂の目録を対象として図画掛図の発展過程について整理し、美術鑑賞教育用〈学校用民間教育掛図〉について分析する。また戦前に日本に輸入されたヨーロッパの掛図の状況を、日本の博物館や大学等で調査・整理し、その来歴や原図、翻刻した画家等についても調査をすすめる。 〈学校用民間教育掛図〉を所蔵するいくつかの博物館から問い合わせがあったため、実見調査を行い、〈学校用民間教育掛図〉の日本全国への普及状況を明らかにする。牧野・金子は研究成果について国内の学会で発表し、論文とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査先との日程調整により2023年度に調査を行うことになったため未使用額が生じた。2023年度に行う調査の旅費として使用する予定である。
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