研究課題/領域番号 |
22K02541
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 真帆 千葉大学, 教育学部, 准教授 (30710298)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 伝統工芸 / 美術教育 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
2023年度は,昨年度の調査を踏まえて協力校である中学校と教員養成校等で授業実践研究を行った。最終的には,次年度のカリキュラムモデル作成につながるような知見を得ることができた。本研究は,文化的資質・能力に関する教員養成のプログラムの検討のため,教員養成校と中学校の連携とアクションリサーチの視点を取り入れていることを特徴とする。前年度に教員養成校で伝統文化の授業を受講した学生と研究者が,2023年6月から7月に中学校で伝統工芸の授業を実施した。授業観察や学生のふり返りから,教員養成校での学習体験と教育実習の指導の接続の難しさと重要性が明らかになった。制作の指導はいくらか見られたものの,文化的問題に関して批評的省察を促すような指導には至らなかった。2022年度の授業実践を踏まえて,2023年度は文化としての日本の伝統工芸について批評的視点を持って理解することを目的とし,昨年度から引き続き米国協定校の日本美術史の授業グループとの日本美術に関する共同オンライン学習を取り入れた。2023年度は新たにアジア美術史研究者による近代アジアの女性美術家(刺繍)の講義を受けることによって,学生が美術・工芸を社会との関わりに着目して批評的に捉えることを試みた。また,美術による教育に基づくカリキュラムとして,ヴィジュアル・ジャーナルを活用したふり返りを実施した。 国際学会でのワークシップ及び口頭発表から,工芸を含む美術の概念の問題,教育において伝統を重視する傾向がある等は日本独自の課題であることを再確認した。本年度実施した調査からは,教師自身が美術文化についての課題を批評的に捉えることの重要性とそのためには変容学習の視点が手がかりとなることがわかった。また,中学校美術科における日本美術と工芸の教育の課題をカリキュラムの観点から検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年度の調査を踏まえて美術教師養成校において伝統工芸と文化の持続可能性に関する授業実践を中学校と教員養成校で実施することができた。教員養成校と附属学校という研究環境を活用したことで,スムーズに研究を進めることができた。また,教員養成校の学生に対してはインタビューではなく,ふり返りの記述等を活用したことで効率的にデータを収集できた。しかし,海外の美術教師養成コースでの文化的資質能力育成に関する調査を実施することができず,先行研究レビューが不十分であり,質的データの分析には時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,前年度に収集したデータの分析を進め,カリキュラム改善し,教員養成校で実施する。特にヴィジュアルジャーナルは,美術工芸の特徴を活かした学習の可能性があるため,今年度の活動に取り入れたい。また,先行研究のレビューを継続して行うことに加えて,海外の美術教師養成での文化的資質能力育成に関する文献のレビューを実施したい。最終年度に向けて,徐々に文化的資質能力の育成を脱植民地化の美術教育,変容学習,芸術を基盤とした研究の視点を取り入れてモデルとなるカリキュラムの検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の成果を踏まえて,教員養成校で改善したカリキュラムを実施するため,教材費等が必要とされる。また,先行研究のレビューは国際ジャーナルや洋書が主であり,為替変動の影響から費用がかかる見込みである。また,本年度は,途中の成果を発表予定であること及び情報収集のため,学会参加費等が必要となると考えられる。
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