研究課題/領域番号 |
22K02548
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
吉川 芳則 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70432581)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 批判的読みの観点、対象 / 精選・構造化 |
研究実績の概要 |
授業モデル構築に向け、説明的文章の批判的読みのあり方(観点、対象)を精選することを試みた。批判的読みの実践研究に影響を与えた森田信義、井上尚美、阿部昇の研究成果を対象に、それぞれが提示した批判的読みの観点、対象の異同を検討した。三者が批判的読みの対象・観点としたものは〔ことがら・内容〕〔論理・展開〕〔表現〕〔筆者〕であった。これらにおいて具体的な批判的読みの対象・観点として三者が挙げているものを整理・構造化した。まず、〔ことがら・内容〕〔論理・展開〕〔表現〕〔筆者〕について共通的に意識したい対象・観点を「中心となる対象・観点」として中核的要素とした。「曖昧さはないか」「適切・妥当か」「必要か」「十分か」の四つである。次に、それらとは別に、あるいは連動しながらも、それぞれ固有に着目したい対象・観点として、〔ことがら・内容〕〔論理・展開〕〔表現〕〔筆者〕を周辺に位置付け、具体的な対象・観点を典型的かつ必要最低限のものとして配した。〔ことがら・内容〕については「正確か」「偏りはないか」(サブ的なものとして「隠されていないか」「反論はできないか」を括弧付きで置いた)を、〔論理・展開〕については「根拠、事例は」「根拠、事例と主張との関係は」(サブ的に「隠された仮定・前提(理由・原因・条件)はないか」)を、〔表現〕については「ことばの選び方」「用語の使いか」を抽出した。〔筆者〕については、〔ことがら・内容〕〔論理・展開〕〔表現〕の各々に関わるものであるため別扱いとし、「意図、発想は」のみを配した。「中心となる対象・観点」である「曖昧さはないか」「適切・妥当か」「必要か」「十分か」は、説明的文章教材を批判的読みで研究・実践する際の基本的で、原則的な着眼点とすることが望ましいとした。これに基づく実践を、批判的読みにはじめて取り組む教師にとってのものとして小学校で1例、中学校で2例行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
説明的文章の批判的読みの観点、対象の精選・構造化を仮説的に設定することはできた。しかし、発達段階を踏まえた系統的な観点での整理が十分ではない。また、実践ベースでの検証は、コロナ禍の影響もあり、批判的読みにはじめて取り組む教師にとっての実践として小学校で1例、中学校で2例を簡易的な方法で展開することにとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
発達段階を踏まえた説明的文章の批判的読みの観点、対象の精選・構造化の作業を進めるとともに、それに対応した学習指導過程モデルを仮説的に設定することを試みる。授業開発、実際の授業展開においてモデルそのものの課題や可能性、活用のあり方等を検証し、精緻化を図る。可能な範囲で実践事例を多くして妥当性を高めるようにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、学会等がオンライン実施になり旅費が押さえられたこと、また学校現場における実践研究を実施しにくい影響から授業分析に要する費用をかけにくい状況が生じたことによる。次年度においては、上記の問題はいずれも解消されることが期待されるため、適切な使用が見込まれると思われる。
|