研究課題/領域番号 |
22K02573
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柳澤 浩哉 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (40230263)
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研究分担者 |
山元 隆春 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (90210533)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国語教材 / 西洋修辞学 / 教材分析 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は次の二つである。(1)小説教材に対して客観性のある深い読みを提示する。現在使われている中学・高校全ての国語教科書の小説教材を分析し、その成果をインターネットで公開する。 (2)本研究が使用した知見を国語教師が自分で使用できるよう、西洋修辞学を応用した使いやすい教材分析法を開発する。これについてもインターネットで公開する。 第一の課題である教材分析の進捗状況は以下である。現在使用されている中学・高校の全ての国語教科書を入手し分析作業を進めている。分析する教材は40程度であり、作品の分析は半分以上完了している。 第二の課題である教材分析法の開発の進捗状況は以下である。二つの分析法の開拓を進めている。1)小説内の情報を手掛かりとして、小説後の展開を予測する。注目するのは、登場人物の心理変化であり、小説内の体験の残した心理的影響を推測し、その後の人生への影響を考える。一般の教師が使用しやすいように、心理的影響は、プラス~マイナスの方向と強さ、さらに影響が及ぶ対象で測り、登場人物の特徴に重ねることで、その後の展開を予想させる。小説後の展開を予想させる研究は珍しくないが、どのような小説にも応用できる形で、この方法を整理した先行研究はない。2)作者(あるいは語り手)が力を入れて語っている場所を見つけ、それを手掛かりに、その意図や狙いを考える。力を入れて語られた箇所は語りの山場であり、山場の場所から、語り手の計算・性格・隠された物語などが浮かび上がってくる。語り手が力を入れた個所は、修辞技法の密度や現在感の高さから客観的に認定できる。現在感は有効性と汎用性の高い優れた概念であるが、西洋修辞学においても認知度は低い。この方法の提案は、現在感という概念の再評価の意味も持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている理由は次の二つである。(1)最新の西洋修辞学の情報を集めるのに時間がかかっている。(2)公開するホームページのデザインとレアウトが決まっていないため、完成原稿を作ることができない。 しかし、二つの問題は比較的簡単に解決できる。(1)申請者は分析に必要な西洋修辞学の知見を既に持っているため、最新の知識の収集が不十分であっても課題は解決できる。(2)ウェブデザイナーを選定しデザインを依頼することで、魅力的なデザインができれば完成原稿を完成させることができる。 申請者が2022年度から附属学校の校長になったことが、作業を遅らせる最大の要因であるが、校長職に慣れてきたことで、2023年度は大きな障害にならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
全ての小説教材の分析を2023年度で終え、合わせて、代表的な修辞技法の解説も2023年度中に終わらせる。これと並行して、ホームページの作成作業を行い、2023年度中にホームページの公開に踏み切る。あわせて、小説教材分析法も掲載するが、こちらの掲載には工夫が必要なため、2023年度だけでは終わらない可能性がある。 2024年度は、修辞技法の解説を進めてホームページに掲載するとともに、小説以外の教材の分析も進める。特に、力を入れたいのが古典教育材である。教科書に採用されるような古典テキストはいずれも名文であり、短い文章であっても構成・修辞・語彙等の表現に工夫が凝らされたものが多いが、古典作品の表現における工夫は国文学研究において殆ど指摘されてこなかった。国語教材を事例として、古典作品の表現の高い工夫を提示することで、従来の古典研究に対して一石を投じたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
差し引き学は、15000円程度であり、ほぼ計画通りに使用できている。
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