研究課題/領域番号 |
22K02598
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡辺 敏明 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90220904)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 小学校体育科 / 体つくり運動 / スポーツ運動学(発生運動学) / 運動アナロゴン / 促発指導 |
研究実績の概要 |
令和4年度は,まず,これまで研究者が開発済みの教材を運動アナロゴンの視点から修正・系統化した。また,子どもにこれだけは身に付けさせておきたい運動について検討を行い,運動を支える中核的な能力を特定して,それを身に付けるための動き方(方法)及び子どもへのInstructional Cueを付加したプロトタイプ版教材を複数作成した。作成したプロトタイプ版教材の有効性を検証するために,N県子どもの体力向上支援事業(小学校16会場)において低学年運動遊びプログラムの一部に取り上げて実践を行った。また,高学年でも体つくり運動の単位教材の一部に取り上げて実践を行った。実践では,児童が運動に取り組む様子をVTR撮影し,各運動で出現する動き方,各運動に取り組む児童の様相,運動構成の適切性等について観察分析を実施した。加えて,児童及び教師に質問紙調査を実施した。観察分析と質問紙調査の結果から,運動遊びプログラムは児童に運動へのなじみを触発すること,運動発生を促すこと等の有用性が確認された。 次に,N県教員研修(小学校体つくり運動)において,プログラムの内容の一部にプロトタイプ版教材を取り上げて実践した。この教員研修プログラムは,研究者が作成したオリジナルプログラムで,講義では「運動発生以前の学習ステージ」「運動の意味や価値」を大切にする内容,実技では「動きが発生・発展していく様相」を体験する内容を中心にした5時間で構成されるプログラムである。教員研修プログラムの受講後アンケート調査の結果から,講義においては教材選択の視点を理解できた内容が確認され,実技においては運動アナロゴンのつながりや動感の発展可能性を理解できた内容が確認された。 上記を踏まえて,児童への実践,研修講座での実践における結果の整理・分析については,個別のプロトタイプ版教材の有効性の検証とともに現在進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は,新型コロナウイルス感染拡大状況下であり,当初予定していた一連の運動(プロトタイプ版教材)の内容及び構成を変更することに加えて,感染拡大防止策として3密を避ける必要が生じた。また,コロナ禍によってこれまでになく子どもたちの体力が大幅に低下している状況(怪我の増加や,すぐに疲れてしまう等)が見られた。加えて,早い時期から熱中症対策に取り組まなければならなかった。そのため,体育活動のあり方そのものを考えなければならない状況となり,新しい生活様式を踏まえた運動(遊び)となるよう選択・修正して構成したことで,当初考えた実践内容を子どもの実態に即して修正・変更せざるを得なかった。小学校現場での実践を通して,コロナ状況下における新しい生活様式をふまえた小学校体育授業のあり方を検討していくための情報を得られたことは大きな成果であるものの,十分な実践展開と検証ができたとはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
系統性モデル教材(小学校低学年用)を確立させるために,これまで開発してきたプロトタイプ版教材に基づいて,小学生への実践を行い,「コアな運動(子どもにこれだけは身に付けさせておきたい運動)」「Instructional Cue」「設計」を分析・改善する。また,同じ開発手続きにそって,小学校中学年と高学年用の系統性モデル教材を開発する。中学年用は,「動きの洗練化」,高学年用は「体の動きを高める(柔らかさ・巧みさ・力強さ・運動の持続)」ことに焦点化して,開発済の教材及び学習指導モデルを運動アナロゴンの視点から選択・修正して,系統性モデル教材を作成する。同様の視点から,提示するInstructional Cueについても子どもの発達段階に即した言葉にする。また,実践に基づいて系統性モデル教材への設計適用の限界と,その解消策について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度に未使用額が生じた理由は,研究計画の中で当初予定を組んでいた一連の予定が新型コロナウイルス感染症の影響によって中止せざるを得なくな り,国内の調査・研究の一部を次年度に繰り越すこととしたためである。
(使用計画)令和4年度で使用できなかった研究費を,令和5年度請求額に繰り越して,調査・研究のための経費として使用する。
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