研究実績の概要 |
2022年度は,小学校高学年における英単語読み能力の背景要因を検討することを目的として,小学校5・6年生36名を対象とし,英単語読みの正確さ,ならびにローマ字読みの正確さ,および漢字とひらがな(単語・非単語)読みの流暢性に関する課題を実施した。英単語読みの成績を従属変数として重回帰分析を行った結果,ローマ字読み課題(β=.43, p<.01)ならびにひらがな非単語読みの成績(β=.37, p<.05)が有意な変数として抽出された。なお,この回帰式の決定係数(R2)は.48であり,有意であった(F(2,33)=16.99, p<.01)。このことから,小学校高学年児童における英単語読み能力にはローマ字読みの習得状況とひらがな非単語のような,表音文字を音読する流暢性が影響を及ぼすことが推測された。加えて,対象児が小学校2年生時に実施した認知(音韻処理・視覚認知・形態素)能力が現在の英単語読み能力を予測するのかについて後方視的な検討を行った。対象児を英単語読みの高得点群と低得点群に分け,2年生時点における認知課題成績をt検定によって検討した結果,音韻処理能力を反映するRAN課題(t(33)=2.30, p<.05),ならびに音韻削除(モーラ)課題(t(33)=2.25, p<.05)において低得点群に比べ,高得点群で有意に得点が高かった。このことから,小学校2年生時点における音韻処理の自動化とモーラレベルの音韻処理の能力は,小学校5年生時の英単語読み能力と関連する可能性が示唆された。これらの結果は,第2言語である英語の読みが,母国語である日本語の読みやその基盤となる認知能力とどのように関連しながら習熟していくのかについて明らかにするための資料となることが期待される。
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