研究実績の概要 |
2023年度は,中学生における英単語読みスキルと音韻処理の関連性について検討を行った。中学1年生の生徒49名(男子26名、女子23名)を対象とし,英単語読み、色名を英語で呼称するRAN、英単語を用いた音韻削除の3課題を実施した。英単語音読課題得点を従属変数,その他の課題得点を独立変数として重回帰分析を行った結果,親密度が高く音韻規則性が低い英単語音読の得点を従属変数とした場合において,RAN課題の反応時間の標準偏回帰係数が有意であった(β=-0.36, p<.01)。なお,この回帰式全体の説明変数(R2)は0.19で,有意であった[F(2,46)=6.46, p<.01]。さらに親密度が低く音韻規則性が高い英単語音読の得点を従属変数とした場合において、RAN課題の反応時間(β=-0.32, p<.05),ならびに音素削除課題得点(β=0.43, p<.01)の標準偏回帰係数が有意であった。なお,この回帰式全体の説明変数(R2)は0.29で,有意であった[F(2,46)=10.95, p<.01]。これらの結果から、RAN課題の成績に反映されるような音韻処理の自動化能力は英単語の属性に関わらず,英単語読みスキルに影響を及ぼすことが示された。一方で親密性が低い英単語を正しく音読するためには,音素レベルでの音韻意識が重要な役割を担うことが示唆された。 以上の知見より,昨年度実施した小学生を対象とした検討も踏まえると,音韻処理能力は母国語の読みだけでなく第二言語である英単語の音読にも影響を及ぼすことが明らかになった。このことは,英語の読み困難における早期発見・早期対応における重要な資料となりうることが期待されるものである。
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