研究課題/領域番号 |
22K02636
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
金野 誠志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50706976)
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研究分担者 |
太田 直也 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (10203796)
永田 成文 広島修道大学, 人文学部, 教授 (40378279)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多元的な価値 / 文化遺産 / 台湾とシンガポール / 日本とイギリス / 国際社会への参画 |
研究実績の概要 |
台湾に残されている日治時期につくられた現在も稼働している潜在的世界遺産「烏山頭ダム及び嘉南大水路」とシンガポールで当時現在まで稼働している世界遺産「シンガポール植物園」をとりあげ、国際社会への参画意識を高める授業構想した。 そして、なぜ、植民地統治期に宗主国によってつくられた文化遺産が、統治されていた国湯地域で大切に保存・継承されているのか考えていくことを契機として、国際社会への参画には、自国の利益だけでなく、他者にも望まれる要素が欠かせないことを学んだ。自国の利益とは、日本としては、米部作の解消であり、イギリスとしては、プランテーションの開発によるゴム生産での利益獲得である。このように、台湾では、米の生産、シンガポールではゴムの生産への貢献が事例としてとりあげられ、もともとは、植民地統治の中で、宗主国の利益優先でつくられた施設であったことまでは学んでいる。このことは、台湾とシンガポールの社会科教科書に書かれている記述をもとに、日本の小学生が知識を獲得し理解を進めた。イギリスの教科書と日本の教科書でこの時代がどのように著されているかまでは、未だ、学んではいない。 この学びを高めたのは、愛媛県の小学校と埼玉県の小学校の遠隔交流授業で、取り上げた文化遺産について互いに調べ知識を深めた内容を交流したことであった。単独の学校で、それぞれの文化遺産について調べたのでは、時間や労力からしても効率的ではないし、遠隔交流学習を目指すということは、互いの学校児童の学習意欲にもつながっている。 次年度は、植民地でつくられた文化遺産と統治した側の国でつくられた文化遺産との関係性を、遠隔交流授業を交えて学ぶことで、更に国際社会への参画意識がどのように変化するか確認し、授業モデルとして整理したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、コロナ禍で遅れていた、外国における教材収集・調査が、本年度は順調に進み、授業構想から実施まで、予定通りの進捗を回復することができた。これは、研究協力校の積極的な支援の賜である。自然での管理職や該当学年との打ち合わせや確認がスムーズに進行し、授業開発の趣旨と内容の理解を得ることができていたことがその基盤にはある。遠隔会議システムを使った遠隔交流授業も実施でき、共同研究者である大学教員や研究協力者である小学校教員との打ち合わせや治験の交流、共同調査や紀要材開発が順調に進んだ。大学教員による小学校教員への指導・助言だけでなく、大学教員による小学校での授業も複数回行うことができ、授業の内容的な質の確保や確認もできた点は、大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、開発授業の実施は、6割程度でき、児童の意識変化に対する調査は、2度行っている。最終年度は、統治した側の国でつくられた日本の世界遺産「富岡製糸場」とイギリスの世界遺産「キュー王立植物園」についての学習を行い、前者が台湾の潜在的世界遺産「烏山頭ダム及び嘉南大水路」と、後者が世界遺産「シンガポール植物園」とどのような関係性にあったのか学習していく。そして、日本とイギリスの植民地統治の特徴と概要の理解を基盤として、今後、国際社会への参画を考える上で大切な要素を抽出しつつ、児童の国際社会への参画意識を高める授業の開発と提示を進めたい。 次年度の課題として、研究協力校の大切が変わっているため、事前の打ち合わせや確認を丁寧に行い、快く研修授業を実施させてもらえるよう配慮することと、児童の意識変容を数値で明確に表し分析することである。4月中には研究協力校を訪問し、研究に対する意識統一を図るとともに、3回目の児童の意識変容に対するデータを確実に取っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者が2022年度の予算で予定していた海外での文化遺産や学校教育の調査が、コロナ禍のため2023年度に繰り越されたことで、その旅費分が、一年ずつ、先送りとなったために生じたものである。2024年度に、遠隔交流授業の第2回目を行うが、それ以前に、授業づくりに必要な残されている海外での文化遺産や学校教育の調査、学会発表などに計画的に使用することとする。
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