• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

ポストコロニアル時代における環太平洋意識の育成と連帯性を養う教材開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K02640
研究機関帝京大学

研究代表者

中山 京子  帝京大学, 教育学部, 教授 (50411103)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードポストコロニアル / サイパン / キリバス / 焼津 / 環太平洋
研究実績の概要

<海外調査>北マリアナ連邦サイパン島における日本統治時代の影響とポストコロニアリズムの様相を調査した。サイパンは日本統治時代の拠点でもあり、現在はアメリカ合衆国のコントロール下に置かれ、コロニアリズムの視点から教材を考える地として着目してきた。サイパンには先住民族チャモロの他、プランテーション経営のために流入してきたカロリンの人々が混在し、チャモロ文化とカロリン文化の双方が肯定されている。タナパグ中学のチャモロ文化学習の調査において、チャモロ語クラスの教材としてカロリン語や日本由来の童謡のメロディーが活用されているといったコロニアリズムの影響を残しつつも、それが現在のサイパンの文化とするポストコロニアリズムを表現する教材を発見した。チャモロが優位を占める社会において、日本・カロリン・チャモロのルーツを持つ人々へのインタビューを通して、ポストコロニアルな教育的な取り組みを知ることができた。
<国内調査>2022年度から継続して静岡県焼津を拠点とするカツオ一本釣り漁船に乗り込むキリバス人たちのコミュニティや、彼らのサポートをする会社への調査を行なった。日本とキリバスの関わりから教材開発への視点を抽出し、それをもとに研究協力者と協議しながら小学校において授業実践を行なうことができた。それらをまとめた報告についての問題がないか、当事者にチェックをしてもらうこともできた。
<研究会の継続>2022年度に日本国際理解教育学会において研究協力を募り、集まった12名とオンライン研究会を行った。2023年度はその中からさらに数名と集中的に協議する場を設けて、教材開発に向けた研究を行なった。そこから高等学校の公開発表で研究協力者がハワイの音楽を取り上げた授業を公開し、研究の一端を公開することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2023年度は予定した調査を国内外で実施することができ、特にサイパン島での学校訪問・授業観察ではコロニアリズムの影響を残しながら、ポストコロニアルな教育活動の興味深い事例と出会うことができた。またマリアナ政府観光局の名誉観光大使に任命され、研究推進のための支援を受けることができるようになった。
2022年度の調査や研究会でのディスカッションを経て、教材化への視点を抽出し、2013年度にはいくつか単元の形にすることができ、学校教育現場で授業として実践してみることで可能性や課題を確認することができた。また学会発表や論文にすることができた。
2024年度に向けて、帝京大学総合博物館でマリアナ諸島に関する企画展示を実施する機会を得て、調査を活かした展示の準備を進めることができた。

今後の研究の推進方策

帝京大学総合博物館において、「南の楽園の物語-あなたはグアム・サイパン・ロタ・ティニアンを知っていますか-」の展示を5月から8月まで行う。展示を制作するプロセスで、ポストコロニアルな視点を含み込むように意図し、一般来館者や学生への啓蒙の場とする。展示開催期間中に講演会やサロンコンサートを開催し、マリアナ諸島におけるポストコロニアルな様相を伝える場を設け、研究成果の普及に取り組む。
サイパンへ再度行き(8月)、継続調査を行う。今年度はマリアナ政府と政府観光局の協力を得る体制が整ったことから、これまで研究代表者が構築してきたチャモロネットワークとは異なる人々と出会い、新たな視点を得ることを期待する。また、現地での講演会などで研究について話し、当事者の意見を聞き、当事者不在の教材開発に陥らないようにする。この調査に、現職教員数名が同行することから、教材開発や授業実践化に繋げたい。
グアムへ行き(10月)、先住民族の文化復興運動の一つとして取り組まれてきたチャモロダンスグループの25周年の祝賀会に参加し、25年の歩みについてインタビューするとともに、島の多文化化が進行する中で「チャモロ」のあり方を、社会的リーダーや若者がどのように捉えているのかを調査する。
焼津を拠点にするカツオ一本釣り漁業に携わるキリバス人や日本人との交流を継続する。
2025年度の最終年度を意識して、刊行物への準備を開始する。研究全体を刊行物に落とし込むための思考の整理を行い、研究協力者と協議をする。調査に行く機会を作れていないが、文献調査などで可能な教材開発についての研究を進める。研究の成果に応じて、日本国際理解教育学会、日本社会科教育学会での発表、シンポジウムの開催などを計画する。

次年度使用額が生じた理由

計画的に使用を進めることができわずかに次年度使用額が生じたが、無理に使用することをせず次年度の研究成果展示に使用する消耗品購入に充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] グローバル・ヒストリーの視点を取り入れた太平洋に関する教材開発ーロタ島に生きる人々を事例にー2024

    • 著者名/発表者名
      中山京子・東優也
    • 雑誌名

      日本グローバル教育学会

      巻: 26 ページ: 37-53

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ポストコロニアル時代における環太平洋市民意識の育成と連帯性を養う教材開発ー日本の水産業を支えるキリバスを視点にー2024

    • 著者名/発表者名
      中山京子・東優也
    • 雑誌名

      帝京大学教育学部紀要

      巻: 12 ページ: 49-63

  • [学会発表] ポストコロニアル時代における環太平洋意識の育成と連帯性を養う教材開発―日本の水産業を支えるキリバスを視点に―2023

    • 著者名/発表者名
      中山京子
    • 学会等名
      日本国際理解教育学会
  • [学会発表] グローバル・ヒストリーの視点を取り入れた太平洋に関する教材開発―ロタ島に生きる人々を事例に―2023

    • 著者名/発表者名
      中山京子・東優也
    • 学会等名
      日本グローバル教育学会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi