研究課題/領域番号 |
22K02668
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
今宮 信吾 大阪大谷大学, 教育学部, 教授 (60780236)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生活経験と語彙 / 授業実践と実態調査 / 文章作成能力 / カリキュラム・マネジメント / 話しことばと書きことば / スタートカリキュラム / 教科書活用 / 言語感覚 |
研究実績の概要 |
先行研究からわかったことは、ICT活用の進化に伴い、児童に育みたいことばの力についての課題が提示されていることである。今までの多くの指摘においては、文字入力の問題と文章作成の問題、生活経験の不足からくる語彙力の問題などが挙げられる。タブレット使用が低学年でも実施され、学習方法として定着し、手書き文字ではない学習も進行している。授業実践を通して考えなければいけないと判断したことは、ICT活用をアナログとのハイブリッドで行い、作文の過程における「取材」「構想」「記述」「推敲」の学習過程において、柔軟に使用していくことが必要であることである。 岡本夏木の提案した一次的ことば二次的ことばをつなぐ言葉として話しことばと書きことばの接続がある。口頭詩や「先生あのね」など子どもたちがスムーズに書きことばに移行できるような教材作りも必要だとわかってきた。そもそも作文作成能力を量的に捉える方法と質的に捉える方法があり、それらを通して、何ができるようになれば文章作成能力が高くなったという判断をするのかについて、調査方法を限定する必要が生じてきた。取材活動については「自由選題書くのか」「テーマ設定をして書かせるのか」による違いについても考察し始めている。形式を与えて当てはめて書いた場合には児童の発想や創作ということに重きを置くことなり、思考や記録を目的とした書く力とは別の文章表現能力として捉えている。 低学年の特徴を考察するために、小学校国語教科書4社の分析を幼児教育との接点から考え「ことば遊びと言語感覚」として行った。ことば学びの基礎基本としての学びに向かう力と自尊感情をどのように持たせながら、それをカリキュラム・マネジメントとして他教科との関連において行い、習得、活用、探究という視点で作文能力の評価を行いことも必要であると見えてきた。国語科を書くとした文章表現能力を今後考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンケート調査を行う予定だったがコロナ禍に配慮して予定していたような規模では実施できなかった。しかしながら数十回の授業研究を参観し、そこから見えたことがあり、それを今年度の課題としている。評価に関して授業のふりかえりを行いながらルーブリック評価を取り入れてきたが低学年でどこまでそれが可能なのかと言うところまでは、学校の研究方針に任せた部分がある。学校研究との接点において研究協力校にもお願いしているが、今年度の総括を行い、文章表現能力におけるふりかえりの効果を指導と評価の一体化と言う視点から考える必要がある。 低学年ということで1、2年生を対象に考えてきたが、それまでのレディネスを考えた時に小1プロブレムなどの問題にも対応するためにも、ことば学びにおけるスタートカリキュラムの構想も行う必要が生じてきた。それによって、小学校低学年における子どもの育ちが変わってくるからである。広く学校現場の実態を知るために授業参観、分析を行ったため今後は絞り込んで研究の広がりを研究の深まりへと繋いでいきたい。 ICT活用が進むに当たって、文章を読むことだけではなく非連続型テキストとしての挿絵や写真などを理解して、インプットした上でアウトプットとして表現活動を行うため、学校生活以外の日常的な言語生活についても検討する必要性も見えてきた。ICT活用の場面を限定した研究を考える必要性もある。
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今後の研究の推進方策 |
新たに研究を進めることとして、スタートカリキュラムについての先行研究、事例の考察と、低学年を終えて、国語嫌い、学び嫌いが増える小学3学年のギャップと段差解消、学習意欲の継続問題がある。これは発達段階の前後をどのように捉えるのかという点と、語彙力の発達を考えた際に必要であると判断するからである。また作文能力の研究のために作文データの蓄積も必要となってきた。 また、作文モデルを提示することによって書き方が変わっていることも想定できるので、そのデータの保存の仕方を考えたい。各学級においてiPadで保存し、それを元にして集約し分析する必要が生じてきた。子どもの作文の題材として①身近な人②学校行事 季節④ 自由など検証がしやすい題材で書かせて、共通の分析ができるようにする学校行事作文の功罪はあるものの、書くことが嫌いになるような方法ではなく、共通検証の場として、 共有体験によって、伝え合いができるように作文行事を設定してもらいなからカリキュラムを柔軟に運営してもらえるようにする。その際に児童の主体性をどう捉えるかという問題もある。コロナ禍では行えなかった、児童と教師へのアンケートとインタビューを行い、実態を把握してカリキュラムモデルを作成することにも力を注いでいきたい。今年度のゴールとしては実践事例のタイプ分けと昨年度実施できなかったアンケート調査による児童と教師の意識についての調査、学習指導要領や中央教育審議会答申による影響などsociety5.0に向けた方向性についても研究を進められたらと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会と調査研究(北海道、福島、東京)を予定していたが、コロナ禍でオンライン開催になるなど、予定通りに行けなかったので、今年度調査予定である。また物品では児童使用用のiPadを考えていたが、同じくコロナ禍によって使用できなかったので本年度購入して研究を続けたい。
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