本研究は発達障害様困難のある聴覚障害児について、全国聾学校を対象とした実態調査を行うこと、発達性ディスレクシアを併せ有する聴覚障害児のスクリーニング方法を検討することを通して、聞こえにくさ以外にも学習面、行動面に著しい困難を持つ聴覚障害児の実態を明らかにするとともに、早期発見早期支援に繋げていくことを目的とするものである。研究1年目では、全国聾学校調査について106校に送付し現在集計中である。また、聴覚活用をしつつも音読に顕著な誤り、特に勝手読みの頻発する聴覚障害児童1名(聴覚特別支援学校在籍高学年男児)に対して継続介入の機会を得た。詳細な実態把握を行ったところ、語彙力の著しい低下、注意集中の軽い苦手さがあった。また、「音読・音韻処理能力簡易スクリーニング検査」では単語・非語・短文共に読み誤りや反応時間の延長が見られ、年齢基準値を下回るものであった。STRAW-Rでは、速読・音読・書き取りともに著しい苦手さが見られた。RAN課題や単語・非語の逆唱には遅れは見られなかった。また、非接触型視線分析を行ったところ、助詞や文末に視線の停留がほとんど見られず、注意を払えていないことも示された。読みの困難が生じる原因として、安藤(2014)は読みの際の「語彙ルート」と「非語彙ルート」のバランスの悪さを指摘している。本児は文字の表象から音を想起する「非語彙ルート」の活用に苦手さがあることが想定された。一方で「語彙ルート」を活用しようとするものの、聴覚障害の影響もあり理解語彙数が少なく、制限が生じるため、音や意味カテゴリーが類似している別の単語を「勝手読み」しているのではないかと示唆された。そこで、語彙を拡充するための効果的な支援方法を引き続き検討しているところである。
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