研究課題/領域番号 |
22K02768
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横山 佳奈 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 特任助教 (40910906)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 障害児保育 / 社会性の発達 / 関係発達 / 間主観性 |
研究実績の概要 |
本研究は,自閉スペクトラム症児(ASD児)と周囲との自然なかかわりが生じやすいと考えられる統合保育場面において,保育者がASD児の気持ちを間主観的に把握していることを明確に表現するような,ASD児の気持ちに言及する表現に着目し,ASD児の社会性の発達的変化・変容に,保育者の間主観的介入が与える影響について明らかにすることを目的とした3年計画の研究である。そのために,保育現場における保育者のASD児への介入と,ASD児と保育者または同年代他児とのかかわり場面について長期的な観察調査を行い,映像データを元に分析を行う。研究初年度となる今年度は,改めて国内外の先行研究をレビューしたうえで,対象児のアセスメントを行い,保育現場での観察調査により映像データを収集した。当初の計画において,保育現場にて観察調査を開始する予定であった時期は,新型コロナウイルス感染症の影響により,保育現場において感染拡大が起こっていた時期であった。そのため,現場の負担が大きかったことや,部外者である研究実施者が観察のために保育現場に入ることによって感染拡大のリスクを高めてしまう可能性をふまえ,観察開始時期を変更した。現在は,保育園での自由遊び場面または設定保育場面において,ASD児と保育者または同年代他児とのかかわり場面の観察を継続的に行うとともに,収集した映像データの整理および分析検討を進めている。その結果,保育者からの間主観的介入は,ASD児と他児との葛藤場面を仲介したり,ASD児に対して望ましい行動を教示したりする場面で多くみられることがうかがえた。今後は,対象児の観察を継続し,保育現場におけるASD児に対しての保育者の間主観的介入が行われる場面の詳細や介入の種類,それに伴うASD児の社会性の発達的変化・変容についての分析を進め,保育実践の検討へとつなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,保育現場における幼児と保育者の観察調査を主な研究方法としている。 当初の計画では,2022年度の夏から保育現場にて観察調査を開始する予定であった。しかし,新型コロナウイルス感染症の影響により,その時期に保育現場において感染拡大が起こっていたため,現場の負担が大きかったことや,部外者である研究実施者が観察のために保育現場に入ることによって感染拡大のリスクを高めてしまう可能性をふまえ,観察開始時期を後ろ倒しし,2022年度の冬より観察を開始した。そのために,観察のデータ収集が遅れており,研究の進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,保育現場における保育者のASD児への間主観的な介入と,ASD児と保育者または同年代他児とのかかわり場面についての長期的な観察調査を継続し,映像データを元に分析を行う。保育現場におけるASD児に対しての保育者の間主観的介入が行われる場面の詳細や介入の種類,それに伴うASD児の社会性の発達的変化についての分析を進めていく。また,観察の映像データをもとに,保育者へのインタビューを実施し,保育者がASD児または同年代他児に対してどのような意図で介入を行っていたのかについて問う。以上のデータから,保育現場における保育者の間主観的介入がASD児の社会性の発達的変化・変容に対してもたらす影響について明らかにし,研究成果として報告するとともに,協力園とも共有し保育実践への検討へとつなげていくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け,当初予定していた時期から観察が開始できなかったため,予定より調査費用の使用額が少なかった。また,データの取集にも遅れが生じていたため,学会での研究発表が実施できず,研究発表にかかる旅費の使用もなかった。今後は,保育現場での観察を継続するとともに,国内外の学会にて積極的に研究成果の報告を行っていく予定である。
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