研究課題/領域番号 |
22K02770
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
岡村 章司 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00610346)
|
研究分担者 |
井澤 信三 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (50324950)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 保護者参画 / 保護者と教師の協働 / 特別支援学校 / システム / 行動問題 |
研究実績の概要 |
本研究では、特別支援学校を対象に、行動問題の予防を目的とした全保護者に対する一次支援、行動問題を示す、もしくはリスクのある発達障害児の保護者に対する二次支援から成る、保護者参画システムモデルを構築することを目的とする。 構築するにあたり、今年度は文献研究、調査研究を主に実施した。個別の指導計画などの「個別の計画」に基づく支援に関する国内の実践研究をレビューし、計画の作成・実行・評価の過程における保護者の関与や関与を促す教師の働きかけについて整理した(現在、投稿中)。保護者の関与が乏しい実態が示され、保護者との協働に関する研究の蓄積の必要性が明らかになった。また、学校全体でのポジティブ行動支援における家族統合型システムに関するレビューを行ったまとめが雑誌論文に掲載された。さらに、特別支援教育コーディネーターを対象に、知的発達症児に対する保護者自身の課題などの家庭の問題への支援の現状に関する調査研究を実施し、半構造化面接の結果をもとに論文として整理した。学校は外部機関と連携しながら家庭の問題について扱い保護者を支援している現状が確認されたとともに、教師研修やさらなる支援体制の充実が課題として挙げられた。2023年5月現在、学校現場における保護者参画の障壁や促進要因を明らかにすることを目的に、関連する調査研究のレビュー内容を踏まえて、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターを対象に半構造化面接を行っている。 保護者との協働や支援を積極的に行う自治体や学校に関する調査を実施できなかったが、学会のシンポジウムで特別支援学校の校長に登壇いただき、特別支援学校における保護者参画や支援の現状を確認することができた。 さらに、令和5年度からの学校現場での実践研究の実施に向けて、複数の特別支援学校の教員に研究の目的を説明し、実行可能な実践の在り方を踏まえて研究計画について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保護者参画システムモデルを構築するにあたり、①発達障害児の保護者と学校が協働した支援に関する文献研究、②学校現場における保護者参画の障壁や促進要因に関する調査研究、③先進的な取り組みを行う自治体や学校の調査研究、④保護者と教師が協働して取り組む実践研究を実施する。1年目である令和4年度では、①~③を実施する予定であった。①については、「個別の計画」に基づく支援に関する国内の実践研究をレビューや学校全体でのポジティブ行動支援における家族統合型システムに関するレビューを行うことができ、本研究に関連する知見の乏しさや実践の必要性を確認することができた。②については、知的発達症児の家庭の問題への支援の現状に関する調査研究を実施できたものの、学校現場における保護者参画に関するインタビュー調査は現在進行中である。③については実施することができなかった。以上のことから、研究はやや遅れていると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
学校現場における保護者参画の障壁や促進要因に関する調査研究を引き続き行う。また、保護者との協働や支援に関する先進的な取組を行っている自治体や学校の方とともに、学会でシンポジウムを企画する予定である。さらに、1年目に実施した調査研究の論文執筆を進める。 令和5年度は、1年目の調査を踏まえて、各学校や教師、保護者の実態に応じた、学校現場で実行可能な、教師が主体的に取り組む実践研究を行っていく。行動問題の予防を目的とした、すべての保護者を対象とした一次支援では、学校での活動内容の報告や家庭での子どもの基本的なかかわり方などを伝えるための保護者への情報提供、個別の指導計画の作成及び学校評価における保護者参画のあり方やPTA活動の機能化について検討を行う。保護者との協働や支援に関する校内研修の効果検討も併せて行う。 行動問題を示す、もしくはリスクのある発達障害児の保護者を対象とした二次支援では、教師が保護者とともに家庭での介入計画を立案し保護者の実践をともに評価することを目的とする。研究代表者による、担任、特別支援教育コーディネーターや総務部長等の学校内のキーパーソンへのコンサルテーションを通した研究、他職種の関係者を含む定期的な支援会議の在り方を検討する研究を実施する。校内での事例検討会を通した、保護者と教師の協働を促す取り組みも想定される。 多様な形態をとりながら効果検証を行い、特別支援学校における保護者の参画、教師が実行可能な保護者との協働のあり方を見出す。その際、平成30年度~令和3年度科学研究費基盤研究(C)で開発した教師に対する保護者支援研修プログラムを有効に活用する。また、研究協力者として、博士課程の学生が研究の一部を担う。 一方、保護者支援プログラムのさらなる開発に向けて、保護者がファシリテーターとして参画するペアレント・トレーニングに関する研究も実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
先進的な取組を行う自治体や学校等の視察調査を行うことはできなかったが、令和5年度の学会で関係者とシンポジウムを実施する予定である。その後、必要であれば視察調査を行い、国内旅費に充てる。令和4年度は文献研究や調査研究を主に実施し、調査についてはオンライン等を活用しながらのインタビュー調査であったため、郵送費や学校等の訪問費が必要なかった。それらの繰越金については、令和5年度から実施する実践研究のために、各特別支援学校が必要とする消耗品や校内研修等で活用するipad等の購入費にあてる。データ整理の人件費であるが、2,3月にデータ入力・整理を主に行い、4月以降の支払いとなるため、令和5年度に使用する額として扱う。
|
備考 |
森山潤、永田智子、山中一英、岡村章司、川上泰彦、別惣淳二、掛川淳一、守山勝、松田充、清水優菜、吉水裕也(2022)兵庫教育大学における新しい教員養成スタンダードの構想.令和4年度日本教育大学協会研究集会.
|