研究課題/領域番号 |
22K02785
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉村 優子 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (70597070)
|
研究分担者 |
田中 早苗 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (80811372)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム症 / 言語発達 / 音声処理 / 聴覚誘発磁場 |
研究実績の概要 |
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ子どもたち、またはその疑いのある子どもたちの言語発達とその生物学的基盤をに焦点を当てる。ASDは社会性の障害が特徴であり、その有病率は近年増加していることが報告されている。特に言語面における困難は、発音の不明瞭さ、プロソディの理解や表出の問題、構文理解、意味概念の獲得や表出の遅れなど、広範な形で現れ、これらが日常生活や学業において顕著な障害となることがある。 しかしながら、このような特異的な言語発達の背景にある生理学的メカニズムについてはまだ十分には解明されていない。特に、初期の言語獲得過程で遭遇する困難の背景にあるメカニズムを解明することは、早期介入の可能性を高めるためには不可欠である。 そこで、本研究では、1歳から2歳までの乳幼児を対象に、人の声に対する脳反応を小児用脳磁図(MEG)を用いて計測した。さらに、ASD特性の有無を評価し、言語能力を含む広範囲にわたる発達の評価を行った。今後対象者を増やしながら、これらのデータを基に言語獲得と脳機能の関連性を調査する予定である。 本研究の意義は、ASDにおける言語発達の特性と脳機能の具体的な関連を解明することにある。言語発達の遅れや障害は、ASDの診断や治療のアプローチにおいて中心的な課題となっており、特定の脳活動パターンと言語発達の遅れとの間に有意な関連が示されれば、これが治療や介入の新たな方法を開発するための基盤となると考えられる。 引き続き、得られた初期データを基に分析を行い、更に研究対象者を増やして研究を進める。具体的には、ASDの特性の有無に関連する脳活動の変化に着目し、成長に伴う変遷を記録することを目指す。これにより言語障害の早期発見及びより効果的な教育的支援や療法を提案する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、1~2歳台の乳幼児とその保護者約40名の研究参加協力を得て、データを取得することができた。ASD特性の有無によって群分けして分析するためにはやや人数が少ないため、引き続き研究参加協力を呼び掛けることを予定しているが、傾向などをみるための分析が可能な状態になっており、研究はおおむね順調に進展していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年も引き続き、1~2歳の乳幼児とその保護者の研究参加協力者を募集し、解析対象となる人数を増やす。得られたデータの分析を行い、その結果については、国内外の関連学会で成果報告を行う。また、原著論文として国際学術雑誌に投稿予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データの分析を進めるための解析補助者の雇用を予定していたが、まずはデータ収集に集中する必要があったこと、条件の合う適任者が見つからなかったことから、次年度使用金が生じた。また予定していた国内外学会報告についても、研究分担者及び関係者との話し合いにより、ある程度の結果を得てから行うこととした。 そのため、次年度の予算は主に研究補助者の雇用、学会参加費と海外渡航費、成果報告のための英文校閲費、論文投稿費、出版費用として使用する予定である。
|