研究課題/領域番号 |
22K02794
|
研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
阿部 敬信 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (90580613)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 日本手話 / 音声日本語 / 人工内耳 / バイリンガル教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本手話・日本語バイリンガル環境にある聴覚障害幼児児童生徒の内、人工内耳装用児や中等度難聴の補聴器装用児に、音声日本語といった音声も併用した教育を受ける幼児児童生徒(視覚・音声併用モード群)と、日本手話と書記日本語の視覚モードのみによる教育を受けている幼児児童生徒(視覚モード群)との認知発達や日本手話と書記日本語の言語発達の実態を縦断的に検討し、日本手話・日本語バイリンガルろう教育の指導の効果を明らかにすることにある。 研究一年次のとなる令和4年度においては、研究対象校である日本手話・日本語バイリンガルろう教育実践を行っている私立特別支援学校(聴覚障害)(以下、ろう学校)において、視覚・音声モール群である対象児2名の選定と研究承諾の手続きを行った。対象児は研究開始時幼稚部年長組の女児1名と小学部第1学年児童1名であった。また、それぞれの幼児児童が所属する学年の授業実践について、6月、9月、12月、3月と観察を行い、一部授業について動画に収録し、授業実践分析の動画データとした。現在分析中であるが、小学部第1学年の授業においては、手話科や算数科の授業実践データから、学校の教育活動全体をとおして、日本手話と日本語といった教育内容を扱う教育課程の構造があることが明らかになった。これを「二重のL字構造」と呼ぶことにした。対象児については、装用閾値の聴覚データ、絵本”Frog,where are you?”の日本手話語りデータ、WPPSI-Ⅲ知能検査による知的水準のデータを収集した。また、対象児の所属する小学部第1学年児童8名(対象児は含まず)の絵本”Frog,where are you?”の日本手話語りデータも収集した。次年度はこれらのデータの分析とともに、定期的にAuditory Verbal Therapyによる指導も継続していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大によるまん延防止等重点措置等の発令によって研究対象校での調査が進捗しないのではないかという年度当初に懸念していた事項については、研究対象校での徹底した感染症対策等もあり、問題なく遂行することができた。WPPSI-Ⅲの個別検査や絵本の日本手話語りデータも年度内に収集することができた。言語データ収集を兼ねたAuditory Verbal Therapyによる個別指導もほぼ毎月実施することができた。研究対象児の保護者の協力、研究対象校の協力も得ることができて、おおむね順調に推移している。詳細な分析については次年度としたい。ただ、世界的な電子部品の品薄状況によって、動画データの保存・編集・分析するためのデスクトップPCの購入が間に合っていない。現在、手持ちのデスクトップPCに保存しているが、次年度の早い時期にRAIDのあるサーバー保存や最新のグラフィックスカードを搭載したデスクトップPCの購入を検討したい。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は視覚・音声併用モード群の研究対象児が2名ともに小学部児童(第1学年女児と第2学年男児)となることから、毎月の言語データ収集を兼ねたAuditory Verbal Therapyの指導時間を検討することが必要である。Auditory Verbal Therapyの教材もままごと遊びやカルタから、年齢相当の学修教材を選定する必要がある。対象児の保護者からの研究協力承諾を得ることができている。対照群としての小学部第1学年児童及び第2学年全員の絵本日本手話語りデータの収集やそれぞれの学年の授業実践の動画データが必要である。実施時期としては3学期を考えている。さらに、対象児については音声日本語データとして同じ絵本の音声日本語による語りも収集したい。研究対象校での調査研究を隔月で実施したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際的な電子部品の品薄状況及び研究以外の教育活動や学務等の繁忙により、動画データの記録・編集・分析を行うためのRAIDサーバーや最新型のグラフィックカードを搭載したデスクトップPCの購入ができなかったため。次年度はできる限り早い時期に購入の検討を行い、研究での活用を行いたいと計画している。
|