研究課題/領域番号 |
22K02799
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山形 和史 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (40344600)
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研究分担者 |
野坂 大喜 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (80302040)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人工知能 / 医療AI / 医学教育 / Project Based Learning |
研究実績の概要 |
医療AI技術の臨床利用においては、診断精度はモデル構築時の学習用データの質と量に強く依存し,データセットに含まれる症例によって異なる診断結果が導かれる上、診断過程もブラックボックス化されていること、またAIによる治療患者選定には倫理的課題の発生も考慮する必要がある。このことからAIユーザとなる全ての医療スペシャリストには医療AI技術の特性を理解し、AI診断プロセスを論理的思考でもって既知の医学的知見と照らし合わせ可視化させ、AI診断結果を検証するスキルが必要となる。本研究は次世代AI医療に対応した診断スペシャリスト教育プログラムの確立を目的とする。 医療AIの運用課題を踏まえ、AI技術スキルとAI診断論理的検証スキルを兼ね備えた医療者養成のためのProject Based Learning(PBL)型AI教育手法を確立すべく、2022年度に引き続き「医療AI診断技術と医療AIシステム特性評価教育プログラムの開発」と「医療AI診断における可視化技術と論理的検証スキル教育プログラムの開発」を実施した。医療AI教育用教材として昨年度撮影した顕微鏡画像5万枚に加えて血液腫瘍患者骨髄塗抹標本50例を追加収集し、AI学習と検証に供するデータ収集を行った。これら収集画像10万枚を基に医療AI教育プログラムとして全15回で構成される教育プログラムを開発した。本プログラムはAIデータの収集からモデル構築までのオンデマンド教材と、血液診断用AIモデル作成演習(画像診断モデル、臨床検査数値データからの診断モデル)、AIモデルの評価演習で構成した。臨床検査系学生40名を対象として本教育プログラムを用いたProject Based Learningを実施するとともに、知識定着度について検証を行った。その結果、基礎的な医療診断AI技術の定着については充分な教育プログラムであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「医療AI診断技術と医療AIシステム特性評価教育プログラムの開発」と「医療AI診断における可視化技術と論理的検証スキル教育プログラムの開発」において、現在までに医療AI学習用教材として末梢血標本症例数200例、骨髄塗抹標本50例、合計顕微鏡画像10万枚の撮影を完了している。また診断スペシャリスト向けAI教育を行うため体系的AI基礎学習プログラムとして全15回で構成される体系的医療AI教育プログラムも完成しており、その教育効果についても検証済みである。今後、本教育プログラムの改良を重ねる必要はあるものの、基礎データは充分であり、2024年計画を進めるに必要な基盤データや基盤コンテンツ準備は概ね予定通りであり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022と2023年度研究では、血液形態解析スペシャリスト向けの学習用プログラム開発に特化しているものの、医療AI診断技術としてはチャットGPTなど自然言語解析とボット技術を融合させた会話型AIモデルによる医療診断補助技術も登場している。これらの最新技術を2023年度の教育プログラムには反映させている一方、生成AI技術の登場により、倫理的な問題点など新たな教育課題も明らかになってきており、医療AIの倫理的課題についての教育プログラムも又検討する余地がある。以上のことから、最新の汎用AI技術の開発動向を踏まえ、生成AI技術の医療利用のみならず倫理的問題についても焦点を当て、学習プログラムに反映させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画においては、AI開発用ソフトウェアとクラウド利用ライセンスを計上していたが、当初利用を想定したソフトウェアより高性能かつ安価なソフトウェアを導入したことと、オンプレミス環境でAIモデルの開発を行うことが可能となったことで、使用額に変更が生じた。研究成果は2024年度に国内外の学会にて発表を行うとともに国際誌への投稿を計画しているが、国際学会発表に要する経費やオープンアクセス化に伴う投稿料が高騰していることから、これら経費に充当する予定である。
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