研究課題/領域番号 |
22K02820
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上町 俊幸 石川工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (50280334)
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研究分担者 |
與那嶺 尚弘 沖縄工業高等専門学校, メディア情報工学科, 教授 (00259805)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学習支援 / アニメーション / 遠隔操作実験 / 直流電動機 / 同期発電機 |
研究実績の概要 |
本研究では,電動機・発電機といった電気機器の構造や原理を,3D-CGや小型模型で視覚的に学習したり,電気機器の動作や特性を,検証実験により体験を伴って学習できる学習支援システムの開発を目的とする。2023年度は,直流機の3Dアニメーションを改良し,さらに誘導電動機の3Dアニメーションを開発した。また,三相同期発電機の並行運転の遠隔操作型実験装置を開発した。 直流機の3Dアニメーションは,直流電動機の構造や動作原理,ブラシと整流子の役割りを視覚的に理解できるよう,電流と発生する力の関係や,ブラシと接する整流子が切りかわることで一定の方向に回転を続ける様子などを表現している。2022年度は,一定の条件における動作のみを表していたが,2023年度は,電流の大きさや方向が変わった場合,磁界の方向が変わった場合など,様々な条件でのアニメーションを加え,理解が深まるように改良した。また,誘導電動機の3Dアニメーションでは,誘導電動機の原理が理解できるよう,回転磁界と回転子の回転速度の違いや,速度差により回転子に電流が流れる様子を表現した。さらに,開発した3Dアニメーションにより理解度や学習意欲が向上するか,学生へのアンケート調査を行った。 遠隔操作型実験装置は,実験室に設置された電気機器を,教室から遠隔操作して実験を行い,その特性を教室で観測するものである。2023年度は,三相同期発電機の界磁電流と力率の関係やV曲線の学習ができるよう,並行運転の実験を対象とした実験装置を開発した。遠隔実験装置はOpenPLCで制御され,発電機出力電圧の大きさと周波数を系統電圧に合わせ,位相が一致した時点で発電機出力と三相系統を接続する同期投入を,自動で実行する構成とした。一方,2022年度に開発した無負荷試験の実験装置による結果を,学生に理解しやすく表示するWebアプリの開発にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発する学習支援教材は,①電気機器のグラフィカルなeラーニング教材,②電気機器の小型模型,③授業の中で実験・実演が可能な遠隔操作型実験装置で構成される。 ①のeラーニング教材については,直流電動機の構成やブラシと整流子の役割などを表した3D-CDアニメーションを,条件が変化した場合についても表現するよう改良した。また,誘導電動機の動作を表す3D-CGアニメーションを開発するとともに,これらの3D-CGアニメーション教材について,学生へのアンケート調査により評価したことから,順調に進んでいると考える。 ②の小型模型についは,模型を設計するソフトウェアを選定したものの,実際の模型の設計・製作には至らなかったため,遅れていると言える。 ③の遠隔操作型実験装置については,三相同期発電機の並行運転の実験を対象とし,発電機出力電圧と三相系統電圧の大きさ,周波数,および位相が一致した時点で同期投入できる装置を開発した。その後,発電機出力を一定に制御しながら界磁電流を変化させると,発電機の力率や電機子電流の大きさが変化する。この様子を観測するとV曲線の学習ができるが,発電機出力の制御には至らなかった。また,実験結果を表示する画面にはOpenPLCのモニタ画面を用いているが,学生が理解しにくいといった問題があり,改善の余地が残った。一方,2022年度に開発した三相同期発電機の無負荷試験を対象とした装置について,実験結果を学生が理解しやすい形で表示できるWebアプリの開発に取り組んだが,実験装置と組み合わせての動作検証実験には至っておらず,学生へのアンケート調査も実施できていないため,③については,やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
①のeラーニング教材について,2024年度は誘導電動機の動作原理を表現したアニメーションについて改良を加えて完成度を高める。また,同期発電機の動作原理を表現したアニメーションを新たに作成する。開発したアニメーションを授業等で使用し,アンケート調査により効果を検証する。その結果は,学会発表や論文誌への投稿などを通して,広く公開する。 ②の小型模型について,2024年度は直流電動機と誘導電動機の模型を製作する。また,製作した模型は授業等で使用し,アンケート調査により効果を検証する。 ③の遠隔操作型実験装置については,2023年度に開発した同期発電機の並行運転の実験装置を用いてV曲線の実験ができるよう,発電機の出力一定制御と界磁電流の制御を加える。また,V曲線はベクトル図を描くことでより理解がしやすくなるため,界磁電流と電機子電流の大きさの関係を表すV字形のグラフに加え,ベクトル図を表示する機能を持ったWebアプリを開発する。さらに,2022年度に開発した三相同期発電機の無負荷試験の実験装置や,2024年度に開発する三相同期発電機のV曲線の実験装置を用いて遠隔実験を行い,遠隔実験の有効性に関するアンケート調査を行う。これらの結果は,学会発表や論文誌への投稿などを通して,広く公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
三相同期発電機の並行運転の実験装置では,同期投入して三相系統と発電機出力を接続したあと,発電機出力を一定に制御しながら界磁電流を変化させ,V曲線の測定を行う。この装置の開発において,三相電力計を用いて発電機出力を観測することが必要となる。当初の計画では,すでに保有している三相電力計を使用する予定であったが,経年劣化により故障し,さらに修理の対象外であったため,新たに購入する必要が生じた。しかし,2023年度の残予算のみで三相電力計を購入することや,年度内に納品されることが難しい状況であったため,2023年度内の購入を見送り,次年度の予算と合わせて購入することとした。そのため,次年度使用額が生じた。 2024年度は,三相電力計を購入し,発電機出力を一定に制御しながら界磁電流を変化させ,V曲線の測定が行える装置を完成させる。また,開発した遠隔実験装置についての成果発表のため,学会参加費や旅費,論文誌の掲載料として使用する。
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