研究課題/領域番号 |
22K02822
|
研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
角田 直輝 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50649217)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 金融教育 / キャリア教育 / 専門科目教育への要素取り込み / 太陽光発電投資 / 電磁気学 / 電子デバイス |
研究実績の概要 |
工業高専の学生が自身のキャリア発達の礎を築くために、工学的知識・技能だけでなく、ライフプランニング・ファイナンシャルプランニングなど金融教育的知見の蓄積が伴う必要がある。そこで、本研究では電気系科目にキャリア教育・金融教育を取り入れるための教材を開発する。教材の授業導入を通して学生に継続的な内省を促し、専門科目学習の継続によって「お金を生み、増やせる」という投資意識をもたせ、学修モチベーションを向上させる効果を実証する。令和4年度は本取り組みの授業の到達目標を整理し、授業の評価ルーブリックを作成した。また、具体的な教材として、キャリア教育および金融教育に関するテキスト、電気基礎および太陽電池の原理などを含む太陽光発電投資の授業スライド、事前・事後課題および太陽光パネルで発電する電力などを計測する卓上型装置を試作した。 本取り組みは、授業実施を通して学生のキャリア発達や金融リテラシー向上を促し、ライフ・キャリア・プランを継続的に内省させるねらいから、複数年に渡り実施する予定である。初年度の令和4年度は、2年次開講の電磁気学で実施した。取り組み前の学生アンケート回答から、高専2年生の88%は金融教育の意義を自ら感じていることが分かった。また、70%の学生が、高専で学ぶ専門知識や技能を駆使して将来仕事をするのだという意識があると回答した。しかしながら、専門科目の勉強が楽しい(やりがいがある、やる気が出る)かどうかを問うたところ、肯定的な回答は42%に留まった。このことから、専門科目教育とキャリア教育・金融教育とを連結する本取り組みには妥当性があることが明らかとなった。 本取り組みによる教材の妥当性として、授業実施後に行った学生アンケート回答から、キャリア教育・金融教育は60%が肯定的であったが、投資利回りを計算する実習については肯定的な回答が47%に留まったので改善が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
授業を行うための実習教材およびキャリア教育・金融教育テキストの準備がやや遅れている。実習教材については、コロナ禍のためRaspberry Pi 4Bなどのマイコンボード関連機器が購入できず、実習教材の作製に支障が生じている状況が令和4年4月から令和5年5月現在まで続いている。そのため、実習教材が1クラス分を満たすほど作製できていない。対策として、今年度の授業は実習教材1台当たりの学生数を多くすることで授業を実施している。また、キャリア教育・金融教育のテキストについて、高専生が就職前に知っておくべき社会保険や銀行の役割・借金・レバレッジなど利子に関係する金融リテラシーの一般的事項を広く盛り込むため、作成に時間が掛かっている。 申請書に記載した順番どおりではないが、教材を調整することにより、一部は申請書記載内容よりも進捗している。令和5年度予定の授業設計及び実施は令和4年度に電磁気学(2年後期)で試行済みであり、教材の妥当性検証およびキャリア教育・金融教育の要素を取り込んだ専門科目教育の各観点における効果測定も一部実施済みである。また、令和6年度に本教材を用いた授業の評価が優れていた学生について、教材取り組み中の思考や行動を取りまとめてコンピテンシーモデルを構築する計画であるが、具体的に対象学生へ研究協力の依頼を進めており、一部の応諾学生にはすでに聞き取り調査を始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
実習教材の作製において支障となっているマイコンボード関連機器の不足について、今年度に購入でき次第作製を進める。また、実習教材の妥当性検証結果により、機器操作時間等を短縮する必要が出てきたため、設計の見直しを進めており、令和5年度中に実習教材2を作製できるように設計・試作を進めている。今年度は電子デバイス(5年前期開講)でも実施する予定にしている。2年と5年では成年・未成年の差や就職・進学活動経験の有無などキャリア発達・金融リテラシーの到達度に差があることが期待されることから、キャリア・金融双方の要素取り込みの効果を検討する上で非常に有効であると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
「本研究課題の進捗状況」で述べたように、コロナ禍のサプライチェーン混乱の影響を受けて実習教材の作製が遅れている。また、参加を予定していた2022年9月の国際会議についても、シンガポールで開催される予定がオンライン開催となったため、交通費を計上しなかった。また、教材の作製を担当した学生についても、コロナ禍のため研究補助の活動に支障があった。このように、コロナ禍のため全体的な支出が抑制された。今年度は5月8日以降コロナウイルス感染症が5類に移行されたため、上記の状況は少しずつ改善されるものと期待している。 令和4年度計画の実習教材の作製は令和5年度中には完了する予定で考えている。また、実習教材の改良版も試作する予定で考えている。旅費については、研究が申請書記載内容よりも進捗した場合、令和5年度あるいは最終年度である令和6年度に国際会議で発表する予定である。また、申請書には記載していないが、キャリア教育・金融教育や工学教育に関する学会の聴講もしたいと考えている。
|