研究課題/領域番号 |
22K02827
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
内山 哲治 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (10323784)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 課題研究・探究活動 / 総合的な探究の時間 / 教員支援 / 主体的・対話的で深い学び / アクティブラーニング / 教員間ネットワーク |
研究実績の概要 |
これまでの研究で,高等学校教員に直接課題研究や探究活動の指導には教員自身が主体的・対話的で深い学びの実践が出来る必要があると説明しても,そのような本質的な話よりも指導のためのマニュアルを求められることが非常に多かった。そこで申請時の研究計画として,本初年度において教員ではなく課題研究・探究活動を行っている生徒の指導(声掛け)に入り,その声掛け指導の様子や生徒の変容を高校教員に観察してもらうことを考えた。しかしながら,2022年度もコロナ禍の影響が大きく学校現場に行くことや生徒の課題研究・探究活動の実践にも制限が掛かっていた。そこで,対象となる高等学校を4校のうち,実際に生徒に声掛け指導が出来たのは2校で,残る2校は課題研究・探究活動の進め方に関する講演および発表会助言のみであった。 名取高校とは5月にオンラインで今後の打ち合わせを行ったがコロナ禍で進展せず, 2023年2月になって部外者の立ち入りが緩和され,2年生の探究活動中間報告の参観・助言,1年生に探究活動に直接声掛けが出来た。ここで,一度ではあったが当初の予定であった生徒に直接行う声掛け指導の様子を高校教員に参観してもらうことが出来た。宮城野高校に関しては,8月の3年生探究発表会,12月の1年生・2年生への課題研究・探究活動の進め方に関する講演および探究活動参観,2023年3月の2年生探究活動中間発表会に参加し助言等を行った。こちらに関しても,12月の時点で生徒に直接声掛け指導を行い,指導教員にも参観してもらった。今後は,生徒に行った声掛け指導に関して教員と議論を進める予定で,管理職と話を進めている。また,仙台向山高校と仙台青陵中等教育学校に関しては,教員へのアプローチを検討中である。 一方,物理チップスとして,高校生を主体的にするための授業展開および実践を検討し,学会発表および研究論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は高等学校での実践が中心となるものであるが,コロナ禍で学校現場が年度当初予定通り進まず,われわれの研究も全体的に後期中心になった。しかしながら,当初予定していた2校(名取高校,宮城野高校)に加え,新たに2校(仙台向山高校,仙台青陵中等教育学校)での話が進み研究・実践の場が展開できた。 これまでの研究および実践活動から,直接高校教員に課題研究・探究活動の指導に関する本質を伝えても非常に多くの反発を受けるだけのことが分かっている。そこで1年目の今年度は,高校教員の課題研究・探究活動の指導への認識を転換するために,あえて教員ではなく生徒へ課題研究・探究活動の指導を行い,われわれが行う声掛け指導の様子や生徒の変容を高校教員に観察を通して指導方法の認識をしてもらうように計画した。これまでの教員へのアプローチが外発的動機付けであったのに対し,本実践は内発的動機付けであることになる。当初予定では,年に数回生徒へのアプローチを計画していたが,まだコロナ禍があり,2校に各1回のみとなった。しかしながら,実践するという形が出来たことで2年目につながる成果であると考えている。 教員ネットワークに関しては,名取高校において学校内で教科を超えたワーキンググループに参加し,生徒が探究活動で主体的に活動するための声掛けについて議論をしてもらった。熱心な議論で同じ傾向の意見をもつ教員どうしで班を形成し,意見をまとめてもらった。また,宮城県内の高校で物理を教えている若手教員8名ほどと物理サークルと称するざっくばらんに話し合える場を立ち上げた。2か月に1回のペースの対面で行い,これまで年度内に3回の会合を持った。若手高校教員の悩みとして,授業進行において不確かな点の列挙から始め,年度当初の生徒へのアイスブレークについて等のそれぞれの創意工夫を出し合ってもらい,高校を超えた若手教員のネットワークを始動した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍対応が緩和され,実践校4校との打ち合わせは進んでいる。しかしながら,管理職の異動等で実践内容の変更も検討している。具体的には,名取高校において,5月~6月で3回にわたり2年生生徒の探究活動に声掛け指導に入る。また,初めて教職大学院学生6名(現職教員院生,校種は小・中・高校,教科も異なる)も参加し,生徒の実態調査およびファシリテーターとして声掛け指導に参加する。さらに,10月に行われる文化祭での中間発表にも参加し,生徒の意識変容を調査する。また教員ネットワークとして,教科を超えたワーキンググループの参加・助言の継続を行う。特に,前回教員が生徒の探究活動を指導するとして議論した結果に対して,教員自身が生徒の立場になって教員から議論した結果を指導された場合に,探究活動がどのようになるのかを検討してもらいたいと考えている。宮城野高校においては,現時点で教員へのアプローチよりも生徒への課題研究・探究活動の進め方の指導助言という形で入る。名取高校の教頭が今年度の人事異動で宮城野高校に来たため,名取高校と同様に学校内で教科を超えたワーキンググループを構築したいと考えている。仙台向山高校および仙台青陵中等教育学校においては,管理職とは話を進めているが,教員へのアプローチよりも生徒への課題研究・探究活動の進め方の指導助言がメインとなる。 また,高校を超えた若手教員のネットワークである物理サークルの支援を継続し,今後オンライン参加も実施し,参加できる地域を拡大したいと考えている。 さらに物理チップスとして,高校生が学問・教科の本来の目的を理解し学習することが出来るように,ロジカル・シンキングさらにはクリティカル・シンキングの視点を入れた授業展開および実践を進める。また,課題研究・探究活動への実践として,プログラミング教育との融合や研究レベルの実験の簡易版等の開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度コロナ禍の影響で,実験や実践に掛かる経費が少なかった。掛かった経費も別予算で賄えたので,次年度使用とした。今後の使用計画としては,コロナ禍が緩和され当初通り予定している。
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