研究課題/領域番号 |
22K02828
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
開沼 太郎 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (90388398)
|
研究分担者 |
宮村 裕子 畿央大学, 教育学部, 准教授 (80441450)
服部 憲児 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (10274135)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | STEAM / カリキュラム・マネジメント / 横断的・縦断的学習 / 教員養成・教員研修 / つながり |
研究実績の概要 |
本研究は、教員間の「役割分化」と教育内容や実施主体間の様々な「つながり」の必要性といった相克する政策課題を両立できる教員をいかに育成すべきか、との問いに立ち、STEAM教育を軸としたカリキュラム・マネジメントの実現に資する教員の力量開発のあり方について、内容(プログラム)と運用体制(システム)の検証及びその一体的な構築をはかることを目的として、1)「つながり」を担保する力量開発プログラムの作成、2)教員養成・教員採用・教員研修の接続性や関連性を意識したシステム改善策の提案、3)プログラムとシステム相互の有機的連携をはかるための仕組みの構築を行うものである。令和4(2022)年度の主な実績は下記の通りである。 1)教育活動における「つながり」を担保する力量開発プログラムの作成に向けて、教員調査を実施した。特に、学校経営に関する「つながり」の推進やカリキュラム・マネジメントの実現に伴う諸要因の分析にあたって、「学級(学級担任の判断)」「学年(主任を中心とした学級間調整)」「学校(管理職を中心とした校内規定)」「自治体(教育行政機関による規制や助成)」それぞれの裁量に関する現状と課題について整理した。 2)教員養成・教員採用・教員研修の接続性や関連性を意識したシステム改善策の提案に向けて、教員調査や行政・政策調査を実施した。特に、グループワークのテキストマイニングを通じた評価やQRコードを利用した学級経営活動の工夫等に関する実践をもとに、教育活動におけるICT活用に際して必要な教員の力量を「効率化」「可視化」の側面から検討した。 3)令和5(2023)年度以降に実施予定の検証モデル構築の準備段階として、GIGAスクール構想下で整備された学校現場のICT整備状況について、特に児童生徒用/教員用、学習用/校務用端末や持ち帰り方策の相違等の実態について教員調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種調査ならびに現職教員の協力を得たモデルプログラムの実践については概ね計画通り進行できている。他方、研究協力を依頼している学校や教員の体制や所属の変更等により、同一の環境で継続して情報収集を行うことが困難になっているケースがいくつか存在しており、令和5年以降も同様の課題が生じることが想定される。 研究を進めていく中で、教員の力量開発を検討する要素として「学級(学級担任の判断)」「学年(主任を中心とした学級間調整)」「学校(管理職を中心とした校内規定)」「自治体(教育行政機関による規制や助成)」の裁量に着目する視点、ならびにICT活用に際して必要な要素を検討する観点として「効率化」「可視化」の側面にそれぞれ整理したことで、分析軸が明確になりつつある。 前者の要素については、学校・学年・学級により実態に大きな相違があり、当事者である学校関係者にも十分な意識が備わっていないため、質問紙調査等の量的分析による探究には限界がある。したがって、半構造化インタビュー等の質的分析を組み合わせて検討を進める必要があるものと考えられる。 後者の要素については、いずれの側面も従来の手法を大きく変える形で新たに手がける必要があるため、取組開始時の負担感をはじめとして短期的な観点ではメリットを感じにくい特徴がある。「効率化」の側面ではスクラップ・アンド・ビルドの徹底が求められるだろうし、「可視化」の側面では理想面で終わらずに現実的・実用的な利点を自覚できる工夫が肝要となる。 以上の進捗状況ならびに成果や課題をもとに、引き続き研究を継続する必要があるものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、特に令和5(2023)年度は下記の内容を予定している。 1)教員調査ならびにモデルプログラムの実践を並行しつつ、教育内容やカリキュラムの「つながり」を担保するために必要な教員の資質能力を整理し、力量開発プログラムの作成に着手する。その際、教員調査の結果を随時反映し、「大阪大谷大学STEAMLab」関連の教員らとともに検討を進めるとともに、教科等横断的な学習指導を実施するための指導計画やカリキュラム・マネジメントの推進にむけた教育活動・資源配分の評価に関するプログラム作りに際して、特に裁量のあり方に着目して整理を行う。 2)教員の力量形成の機会として想定される教員養成・教員採用・教員研修における運用体制の課題について、カリキュラム・マネジメント実施の観点から整理を行う。教員養成・教員採用の課題については大学の教職課程の実践をもとに、教員研修の課題については教員調査や行政・政策調査をもとに検討を進める。特に「OJT型の力量開発」に着目し、現職教員の協力を得ながらモデルプログラムの実施と地域・学年等による比較等の手法を通じて検証する。令和5(2023)年度は音声認識機能を用いた音読や意見表明のあり方やQRコード等を活用した従来的手法(アナログ)と新たな試み(デジタル)の融合をはじめとした種々の実践事例をもとに必要と考えられる力量形成過程を対象に、特にエフォートのあり方に着目して整理を行う。 3)1)のプログラムと、2)システムの相互の有機的連携をはかるための仕組みづくりとして、ICTを活用した検証モデル構築に向けた準備を進める。現在協力を得ている現職教員の実践をもとに、プログラムのひな型や養成・採用・研修に求める力量の要素を整理分類し、効果検証のためのモデルプランについて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
教員調査ならびに行政・政策調査を集計分析する上で計画していた作業用コンピュータの導入を次年度に持ち越したことによって次年度使用額が生じることとなった。分析に必要なソフトウェア等の準備は計画通り整えられたので、令和5(2023)年度中にハードウェアを整備して分析体制を整える予定である。 上記以外の用途については概ね当初の計画に沿って使用を進めることを想定しているが、不測の事態に対応できるように柔軟な運用を心がけたい。
|