• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

ナッジ理論を援用した共調整学習によるアクティブラーニング型授業支援システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K02837
研究機関東京理科大学

研究代表者

渡辺 雄貴  東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (50570090)

研究分担者 御園 真史  島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (60467040)
稲葉 利江子  津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90370098)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード教育工学 / 自己調整学習 / ナッジ / 数学教育 / インストラクショナルデザイン
研究実績の概要

本研究は,一斉授業において各学習者がタブレットに配信された教材を閲覧しながら授業を受講し,ノートテイキングを行う中で学習者同士の相互作用を通して,能動的な学習を促すシステムを開発・評価するものである.授業中の自己調整学習の特に遂行,省察段階に着目し,学習方略に関して他者からの援助を得ながら自己調整学習能力の向上を目的として開発する.相互作用を実現するために,行動経済学分野で研究されているナッジ理論を教育に援用する.本研究の目的を達成するため,近藤ほか(2023)が開発したナッジを援用したタブレット型ノートテイキング支援システムであるNudge for Note Taking Assist System(NoTAS)を活用し,研究全体を3テーマ(ナッジと学習方略使用の関連調査・授業設計の提案・評価実験)に分け,順番に取り組む予定である.本研究で開発しているNoTASは,他者のメモ・重要箇所マーカー・不明箇所マーカーの3種類が可視化される機能がナッジとしての役割を果たし,学習方略使用やSRLの育成を目的としている.
2023年度は,NoTASによる可視化が,授業後のノート修正や復習に与える影響を調査した.はじめに,復習時に授業直後の他者の可視化の様子と,最新の可視化の様子を切り替えられるよう,機能を追加した.次に大学生,大学院生を対象とした評価実験を実施した.実験の結果,他者の重要箇所の下線は,読解や内容の想起などの学習行動を,他者の分からない箇所の下線は,自己および他者モニタリングといったメタ認知が促されることが明らかとなった.一方,一部の学習者は,メモや下線が書き込まれた箇所といった抽象的なフィードバックを自身の学習に活用できていなかったため,自己調整学習やメタ認知が発生しうる文脈や学習場面を慎重に選定する必要があることが示唆される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度では,これまで着目していた授業中のノートテイキングなどの学習行動だけでなく,授業後のノート修正および復習のプロセスに着目した.はじめに,他者のメモや下線の様子が授業後にも確認できるよう,授業直後の可視化の様子を保持したレイヤーと,復習中の最新の可視化のレイヤーを切り替えられる機能を追加した.次に,大学生,大学院生を対象としたシステム評価実験を行った.授業後のノート修正および復習中の思考発話データおよび,質問紙の結果から,他者のノートテイキング状況の可視化によって,様々な認知・メタ認知に影響を与えることが明らかとなった.他者の重要な箇所を可視化することで,ノートテイキング,資料の読解,授業内容の想起といった学習行動が促進される.また,他者の分からない箇所の可視化は,自分の理解度のモニタリングを促すため,メタ認知に効果的に作用することが明らかになった.一方,他者のメモの可視化は,具体的な記述は確認できないため,活用できる学習場面が限定されたことから,授業資料上の工夫や,見本ノートや他者の記述の共有など,さらなる支援方法を検討する必要がある.
隔月で行っている研究打ち合わせでは,システムの有効性を拡張し,知識注入型の授業において授業内だけでなく,授業外でのシステム活用を考慮し議論した.また,調査に関する測定方法や評価方法について量的・質的の両側面から検討し,質問紙項目の選定や,ノート修正および復習中の思考発話データや,事後インタビューのコーディングについて議論を行った.本実践結果に関しては,研究代表者・分担者が,成果を段階的に国内外の学会において,報告・発表しており,本研究についてあらゆる観点から意見交換を行い,研究の一助となっている.これらを踏まえて,本研究はおおむね順調に進んでいる.

今後の研究の推進方策

前述のように,研究の進捗はおおむね順調である.したがって,最終年度である3年目にあたる2024年度も,申請書に記載した研究計画に従って進めていく.これまでの研究では,学習者間の相互作用に着目し,システムに援用しているナッジと学習方略使用との関係を明らかにしている.さらに,授業内だけでなく授業外にも着目し,システムによる他者のノートテイキング状況の可視化によるナッジが,授業後のノート修正や復習中のメタ認知や自己調整学習を促進しうることが明らかとなった.この結果を踏まえ,2024年度はシステムを活用してアクティブラーニングを実現するために,授業者と学習者間の相互作用にも着目して本システムを教育現場に導入して効果検証を行う.具体的に,本システムの可視化がナッジとして働くことで,授業者が教室内の学習者のノートテイキングや理解状況を把握し,インストラクションを柔軟に変更することで,学習者中心の授業を展開することができるかを検証する.現在,システムを活用したアクティブラーニング型の授業設計および,授業者へのインタビュー内容とその質的分析手法を検討中である.

次年度使用額が生じた理由

旅費を支出したが,計画より安価に収まったため,次年度の備品購入に振り返る予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Learning Visualization System to Improve the Community Sense and Learning Behavior in Class2023

    • 著者名/発表者名
      Kondo, T., Yokoyama, K., Misono, T., Inaba, R., & Watanabe, Y.
    • 雑誌名

      International Journal for Educational Media and Technology

      巻: 17(1) ページ: 1-14

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 他者のノートテイキング状況の可視化が授業後のノート修正に与える影響2024

    • 著者名/発表者名
      近藤孝樹,御園真史,稲葉利江子,渡辺雄貴
    • 学会等名
      日本教育工学会2024年春季全国大会講演論文集
  • [学会発表] Promoting Learner Interaction Through Visualization of Learning Progress: Development of Nudge for Note Taking Assist System2023

    • 著者名/発表者名
      Kondo, T., Yokoyama, K., Misono, T., Inaba, R., & Watanabe, Y.
    • 学会等名
      EdMedia + Innovate Learning
    • 国際学会
  • [学会発表] Effects of Nudges by Visualization of Others’ Note-Taking on In-Class Learning Behavior2023

    • 著者名/発表者名
      Kondo, T., Yokoyama, K., Misono, T., Inaba, R., & Watanabe, Y.
    • 学会等名
      2023 AECT International Convention
    • 国際学会
  • [学会発表] ノート改善を目的としたガイドノート提供システムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      近藤孝樹,御園真史,稲葉利江子,渡辺雄貴
    • 学会等名
      日本教育工学会2023年秋季全国大会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi