研究課題/領域番号 |
22K02848
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研究機関 | 九州女子大学 |
研究代表者 |
城 佳世 九州女子大学, 人間科学部, 准教授 (40722731)
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研究分担者 |
津田 正之 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (10315450)
石垣 悟 國學院大學, 研究開発推進機構, 准教授 (40373477)
施 光恒 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (70372753)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 郷土の音楽 / 郷土の伝統音楽 / ナショナル・アイデンティティ |
研究実績の概要 |
1 全国から小中学校1000校を無作為に抽出しアンケートを実施した。その結果、郷土の音楽の学習指導を実施している学校は81.3%であった。中学校よりも小学校の実施率の方が高かった。教科書に掲載された全国各地の芸能や民謡をあつかっている学校は70.2%と最多であった。一方、都道府県内の芸能や音楽をあつかっている学校は33.6%にすぎなかった。また、沖縄の芸能や音楽をあつかっていた学校が93.2%であったのに対し、アイヌの芸能や音楽は18.6%、小笠原の音楽や芸能は1.8%であった。郷土の音楽の学習指導が必要な理由については「郷土愛の醸成」という回答が最も多く72.4%であった。一方、「音楽的特徴の理解」は41.4%であった。学校教育において、郷土の音楽、郷土の伝統音楽を学ぶ目的をどのように位置づけるかを再考する必要性が示唆された。 2 沖縄県、山口県、福岡県の小中学校の教員を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、「子どもたちが生活する地域の芸能や音楽」と「日本各地の芸能や音楽」を比較する学習指導が、郷土愛の醸成において有意義であることが明らかとなった。またその教材例として盆踊りをとりあげることの有効性が見いだされた。 3 東京都(小笠原村)で実施した聴き取り調査では、父島の盆踊りが、在来島民(欧米系)、旧島民(戦前からの住民)と新島民(戦後の移住者)の協力によっておこなわれてきたことが明らかになった。文化多様性が求められる今日、ナショナル・アイデンティティを育む学習指導の題材として盆踊りを位置づけることに意義があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 全国から小中学校1000校を無作為に抽出し、アンケート調査を実施した。アンケート調査は紙媒体及びインターネットを通じて実施した。実施項目は次の通りである。①「郷土の(伝統)音楽」の授業を実施したか。②何を教材として授業を実施したか。③あつかった分野。④どのような教材をつかったか。④郷土の音楽・芸能の範囲を教えてください。⑤沖縄、アイヌ、小笠原の音楽をあつかったか。⑥今後も「郷土の(伝統)音楽」の学習指導は必要だと思うか。その理由は何か。なお、アンケート結果については、2023年度に学会で発表する。 2 沖縄県、山口県、福岡県の小中学校の教員を対象に聞き取り調査を実施することができた。授業の映像、及びワークシート等を収集し分析を通して、効果的な授業のありかたを探ることができた。 3 東京都(小笠原村)で盆踊りに関する聴き取り調査を実施した。父島の盆踊りに関しては、在来島民在来島民(欧米系)、旧島民(戦前からの住民)と新島民(戦後の移住者)のそれぞれの立場の方から話を聴くことができた。また、母島においても、旧島民及び新島民の方から話を聴くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1 2022年度のアンケート調査について学会発表をおこなう。 2 2022年度の研究をもとに、学習プログラムを開発する。また、今回あつかう芸能を盆踊りに絞り、国や各自治体が指定する文化財のなかから、各ブロック(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄)から1~3例を抽出する。 3 国、及び各自治体が有する報告書及び映像記録を収集し、各芸能の概要や音楽的特徴等について整理する。報告書や映像資料が不足する場合は、フィールド調査によって収集する。 4 3をもとに学習プログラムを開発する。開発したプログラムは小中学校で実証授業をおこない実効性を担保する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の聴き取り調査は研究代表者、及び研究協力者がおこなった。2023年度には、各地の盆踊りの映像データや資料を収集するための旅費、及び実証授業を参観、検証するための旅費が必要である。
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