研究課題/領域番号 |
22K02902
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
花川 典子 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (60351673)
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研究分担者 |
尾花 将輝 大阪工業大学, 情報科学部, 講師 (00710071)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | エデュテイメント / カリキュラム / 市販ゲーム / リテラシー教育 / デジタルデバイド / 検索プラットフォーム |
研究実績の概要 |
本年度は市販ゲームの調査を中心に実施した.まず,有料,無料の双方の市販ゲームの詳細な部分を調査して,Edutainmentとして活用できる教育要素を引き出せる部分を調査した.主に3つの成果があった.一つ目は「論理思考」を育成するためのRPGゲームのスクリプト制作(簡単なプログラミングのようなもの),二つ目は「経営」の知識を訓練できる経営シミュレーションゲーム,三つ目は「リテラシー教育」に利用できる操作や新デバイスを使いこなす能力のためのゲームである.一つ目の「論理思考」は従来のロボット教材のタイルプログラミングなどに類似している.二つ目は本格的な経営を学ぶにはゲーム内容に依存しすぎており,経営の知識獲得するには不十分ということがわかった.つまり,当初は「論理的思考」や「専門知識」の獲得が市販ゲームを調査することによって,楽しんで獲得できると想定したが,予想に反して市販ゲームをあえて使うことの利点が明確にならないことが分かった. したがって,本研究では「リテラシー教育」にターゲットを絞ることとした.着目した理由は「初めて利用する市販ゲームをサクサクと操作して楽しめる人と,すぐに行き詰って遊ぶことを断念する人の2種類に明らかに分かれる」ということが予備実験で明確になったためである.この現象は社会問題となっている「デジタルデバイド」問題を示唆していると気づくことができた.つまり,市販ゲームを使った「リテラシー教育」を構築することで「デジタルデバイド」という社会問題の解消につながるのではないかと気づいた. 市販ゲームを使った予備実験を実施した結果をより詳細に分析し,初心者や情報弱者がどこで断念するか,どこで行き詰るかを検証した.その結果,予備実験結果から「用語」の理解不足と「操作」の行き詰まりが,新しい機器やゲームを操作するときの主な原因になる可能性が高いところまで明確となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販ゲームの調査はほぼ終了した.市販ゲームの教育に利用できるシーンや箇所を分析することにより,「論理的思考」と「専門知識獲得(今回は経営学)」の可能性を検討した.そこで,予測していた「論理的思考」は他のスクリプトプログラミング(ロボットやタイルプログラミング)の教育と大差がないことが判明し,さらに「専門知識獲得(経営学)」は経営学初心者のごく初歩を学ぶには適しているが,それもゲームの内容に大きく依存する.当初のターゲットの「論理的思考」と「専門知識獲得」は市販ゲームを利用した教材とする利点は大きくないことが調査結果で判明できた. その調査の中で「リテラシー教育」に本研究のターゲットが絞れたことが今回の大きな進捗の一つである.特に社会問題であるデジタルデバイドを解消するための一つの手段としての市販ゲームをつかった「リテラシー教育」をターゲットにできたことは有益な進捗とみなせる. さらに,市販ゲームを使った予備実験を実施した.その結果,初心者や情報弱者が行き詰る主要な原因として「用語」の不理解と「操作」の不理解と分析できたところが,これからの研究の有用な進捗となる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の市販ゲームを使ったEdutainmentの教育ターゲットは,社会問題のデジタルデバイドを解消するための「リテラシー教育」とすることが明確となった.市販ゲームを使った有益なリテラシー教育を実現するために予備実験をした.その結果,「初心者や情報弱者が行き詰る主な原因は用語と操作の不理解」が明らかになりつつある.その予備実験の分析をさらに進めて,行き詰る原因を明確にする.その結果に基づいて本実験を実施する.つまり,用語や操作の理解を何らかの方法で向上させることによって,市販ゲームで遊ぶことを断念することが減少するかどうかの本実験である.本実験の結果をもとに,初心者や情報弱者が陥りやすい「行き詰まり」の解消を,市販ゲームを組み込んだ教材とカリキュラムで実現する研究を推進する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では,全身型VR没入機器「KATWALK」(定価40万円程度)を2セット購入して,データサイエンス教育に役立てる研究予定であった.しかし,高価な「KATWALK」とほぼ同等の機能を有する安価で軽量で小型なKATLOCOSが5万円程度で発売され,こちらを購入することでデータサイエンス教育に利用できるデータの取得が可能となった.したがって,大きく予算の実行計画が変更となった. 同時に市販ゲームの調査を進めることによって,「論理的思考」と「専門知識獲得」と「リテラシー獲得」が市販ゲームを使った教育に適合することが分かってきた.それに従って,データサイエンス教育を前提とした機器や装置が重要ではなくなってきた.ただし,一部の市販ゲームでは購入したKATLOCOSを利用するシーンがあるので,論理的思考や専門知識獲得,リテラシー獲得の教育に利用できる.今後は,予備実験の結果をもとに,本実験に進むための実験用システムの構築のための費用,本実験を実施するための市販ゲーム費用,市販ゲームを利用した教材作成のための市販ゲーム購入などに利用する予定である.
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